◆どうして「諮問会議政治」の検証が必要か

 私は二年前、合衆国政府が日本政府に出している「年次改革要望書」の存在に気づき、『拒否できない日本』という本を著し、そこで日本が近年行ってきた法改正や新しい制度設計に米国の要望がかなり反映されている事実を指摘した。こうした話は、いかにも左翼の跳ねっ返りが言いそうなことだが、私は皇室を崇敬しており、今の占領軍によって作られた憲法はいずれ廃棄して自主憲法を制定しなければいけないと考えている。また、それまでの国の安全保障を維持する上で、日米同盟は大切な機軸だとも考えている。ただ、同盟を維持することと、この大切な同盟関係を食い物にしている一部の日米の財界人やエコノミスト、悪徳弁護士などを野放しにすることとはまた別の次元の話である。
 なぜアメリカの「要望」が粛々と日本で実行されてきたかといえば、日本国内にその受け皿、つまり実行部隊が存在するからである。その在り方について先生方に是非とも検討いただくために、手元の資料にある通り「議院内閣制の危機――?諮問会議政治?検証の必要性」というタイトルでお話ししたい。
 今年、皇室典範改正問題を巡りとんでもないことが行われた。総理の私的諮問会議の「皇室典範問題に関する有識者会議」のことである。本来、皇室問題については皇室会議という三権の長や皇族方からなる正式な会議があるにもかかわらず、そこを敢えて回避するような形で有識者会議が設置された。その人選や選出過程について、私は一人の国民として全く説明を受けた記憶がないが、そこで女系容認というとてつもない答申が出され、それに沿った方向で法改正をするという動きが起こった。
 幸い、秋篠宮家の御慶事によって、とりあえずこの暴挙は頓挫したが、問題は総理の私的諮問会議を使い、そういう重大なことをやろうとした手法にある。実はこうした手法は皇室典範問題だけではなく、今や日本の国政全般に及んでいる。その結果、国民代表である国会議員が決めた国の方針や政策が正当性を失い、一部の財界人や学者が政治を牛耳るようになりつつある。これはまさに議院内閣制の危機と言うしかない。
 本日は、こうした問題について、「経済財政諮問会議」「規制改革・民間開放推進会議」「対日投資会議」という三つの諮問会議を取り上げ、思うことを述べてみたい。一人の国民の認識として、参考にしていただければ大変光栄である。

◆「経済財政諮問会議」の実態

 経済財政諮問会議は二〇〇一年一月、森総理の時に設置されたが、その三カ月後に政権交代があり、実質的に機能し始めたのは現政権の誕生以降である。この根拠法は内閣府設置法であるが、同法で規定されている構成員は、議長である総理以外の閣僚は官房長官と経済財政担当大臣の二つのポストのみで、それ以外のメンバーは総理が指名することになっている。 
 もう一つの特徴は民間議員、つまり国民に選挙で選ばれていない有識者の議員が定められていることである。これが問題なのは、例えば任命時に国会承認の縛りがないし、守秘義務などの服務規程もない。また罷免する時の手続きの規定もないことである。
 具体的に規定を見てみたい。まず第二十二条(議員)第七項でいわゆる民間議員について、「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する者」とある。また第二十三条には任期が二年で、再任されることが出来るとある。二十四条には、資料等を官庁に対して請求する権利があるとあり、第二十五条では「政令への委任」についての規定がある。民間議員についてはこれしか規定がない。
 一方、内閣府設置法には経済財政諮問会議とともに、総合科学技術会議についての規定がある。こちらの規定を見ると、二十九条の議員に関する規定の第六項にやはり民間議員についての規定があるが、第三十条「議員の任命」には、この民間議員(六号議員)を任命しようとする時は「両議院の同意を得なければならない」とあり、国会承認という要件を定めている。また三十二条には罷免の規定があり、例えば六号議員については、職務上の義務違反その他議員たるに適しない非行があると認められた場合、両議院の同意を得て、これを罷免することができる、とある。さらに三十三条には議員の服務として、「職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」とか「政党その他の政治的団体の役員となり、又は政治的に活動してはならない」とか、あるいは報酬を得て他の職務に従事したり、営利事業を営んではならない等の非常に厳しい縛りもある。
 このように二つの会議を比べると、経済財政諮問会議の民間議員に関する規定がいかに中身がすかすかであるかが分かる。これだけ見ても、経済財政諮問会議のメンバーである民間議員の正当性に大きな疑問を抱かざるを得ない。
 ところで、民間議員の中心人物は大阪大学大学院教授の本間正明先生であるが、この方は昨年一月五日の日本経済新聞に、日本の統治機構を再構築すべきだとの小論を寄稿している。その小論は、まず内閣と与党は権限と役割が明確に規定されぬまま二元的に並立し、議員はその双方から強く拘束されずに活動しえたと述べている。次に、時代は内閣・与党の二元性と分散型官僚依存体制からの脱却を求めている――つまり、与党が内閣と対等に政策論議をすることがけしからんと述べている。そして、諮問会議の役割の明確化と能力の向上、さらに諮問会議を内閣の意思決定の中枢に位置づけるべきであると提言している。
 つまり、自身が諮問会議の民間議員である本間先生は、国会議員、それも与党の国会議員の権限をなるべく押さえ、自分たち諮問会議の権限をもっと強化しろということを提唱しているわけである。
 また昨年六月六日の日経新聞は、「竹中氏支える『大阪学派』」という記事を載せているが、この「大阪学派」の人脈見取り図の中枢に本間先生が位置付けられている。この記事によると、日本開発銀行の行員だった竹中平蔵氏を大阪大学助教授に抜擢したのが本間先生である。そして彼の下には「日本二十一世紀ビジョン」の専門調査会のメンバー(吉田和男京大教授)や(阪大客員助教授を経て)内閣府政策統括官となった大田弘子さんなどがいる(すでに退官)。今や日本の政策決定の中枢に躍り出た経済財政諮問会議の裏方として、実は本間先生を中心とした「大阪人脈」が経済政策を左右してきたわけである。
 しかし、これはあくまでも非公式なネットワークであり、国民が承認したものでも、国会で承認されたものでもない。民間のエコノミストに過ぎない人たちの人的つながりが、いつの間にか国家の政策決定の中枢に入り込んでいることを危惧せざるを得ない。

◆「規制改革・民間開放推進会議」を牛耳る「四人組」

 次に規制改革・民間開放推進会議を取り上げる。これは政令に基づく組織だが、時限を設けていたため何回か名称を変更し、装いを新たに継続されてきた。最初に発足したのは村山内閣の時で、「規制緩和小委員会」と名付けられた。座長は日本IBM会長の椎名 武雄さんがやっていた。小渕内閣の時に「小」の字が取れて「規制緩和委員会」に昇格するが、この時からオリックスグループ総帥の宮内義彦さんが座長になり、以来六年間、一貫して座長の座に君臨し続けている。この間、小渕、森、小泉と三内閣が誕生しているにもかかわらず、一企業の経営者に過ぎない人物が、歴代閣僚よりも遙かに長い期間に渡って日本の経済政策を左右してきたわけである。もちろん宮内さんは国民が選んだわけではない。いかなる理由でこういうことが許されているのか大いに疑問である。
 規制改革・民間開放推進会議の法的根拠は内閣府本府組織令という政令に過ぎず、メンバーはほとんどが民間人である。例えば「規制改革委員会」と称していた平成十三年の名簿を見ると、委員長の宮内さんの他、旭リサーチセンター社長の鈴木良男さん、東大教授の神田秀樹さん、上智大教授の八代尚宏さんなどがいる。実はこの四人は一貫して常連的な委員として選ばれており、現在の規制改革・民間開放推進会議にもこの四人がいる。宮内さんが議長で、鈴木さんが議長代理、神田教授と八代教授が委員である。つまり、この四人は五年以上も同会議のメンバーであり、この会議を事実上仕切ってきたといえる。残りのメンバーはいわばアリバイとして寄せ集められた人間に過ぎない。
 もっぱらスポークスマンの役割を果たしているのが神田教授と八代教授である。神田教授は経産省の中にある企業価値研究会で、会社法における防衛策やM&A解禁についてのガイドライン作りの座長もやっている。彼は昨年四月七日の日経新聞で、記者から「自民党などの議論では、買収に対する防衛ばかりが重視されている感もある」と問われ、「非友好的買収だからといって悪と断ずるべきではない」などと応じている。つまり外資の敵対的買収はこれから増えるだろうが、それに対して日本の企業が過剰に防衛策を取るのはまかりならんというようなことを述べている。
 一方、八代先生はやはり今年二月十一日の日経新聞で、「世帯間の格差が広がるが、それは悪いことなのだろうか」と、公然と格差容認を唱えている。さらに過疎地にいくら資本を投じても産業は興らない、むしろ撤退を検討すべきだとも述べている。国会議員の先生方の中には、地方のために日夜奔走されている方がいると思うが、この教授は、そんな所は日本から切り捨てろというようなことを言っているわけである。こんな人間が五年も前から規制緩和の旗振り役を務めている。
 この会議は年限が設けられており、廃止されるはずだったが、名前を変えながら続いてきた。それは実はワシントンからの援護射撃があったからでもある。二〇〇三年十月二十四日付の「年次改革要望書」のカバーページはそのことに触れている。それは丁度、今の会議の前身である総合規制改革会議が、二〇〇四年三月末を以て任務完了で廃止するか否かの議論をしていた時期であるが、米国は「総合規制改革会議が構造改革を強力かつ積極的に提唱してきたことを称賛する」と述べ、同会議を引き継ぐ新組織を作れとか、その権限を強化することを要請するとか、十分な職員数と予算を新機関に確保することを求める、などとも述べている。つまり宮内さんの権限を強化して、もっと人材と予算を付けてやれということを米政府が要望しているのである。それを受けて実際、今の規制改革・民間開放推進会議に名称を変え、引き続き宮内さんが座長に君臨するという状況が続いている。

◆「対日投資会議」とは何か?

 対日投資会議はやはり村山内閣の時に設置されたが、今は小泉総理が議長である。
 二〇〇三年、この会議は七十四項目にも上る「対日投資促進プログラム」を決定した。そこには、昨年成立した会社法に盛り込まれた外国株を対価とした株式交換、いわゆる三角合併が含まれていた。これが解禁されると、外資は資金を銀行から借り入れなくても自社株を相手の株主に貸しつけることで、日本の有名企業を簡単に傘下に収めてしまうことができる。これは時価総額が大きい企業にとって有利なM&Aの手法とされる。例えばアメリカの大手製薬会社から見て数分の一の時価総額しかない高度技術を持った日本の製薬会社はあっという間にアメリカ系製薬会社の子会社にされてしまう危険がある。
 それ故、昨年成立した会社法では、三角合併については一年間凍結されることになり、その間、日本企業は防衛策を講ずるための準備が出来ることになった。この一年の凍結は大変重要である。
 ところが、これに対して米国政府は『日米投資イニシアティブ報告書』でコメントを出している。そこで米国政府は、この延期は新しい合併手法が日本経済に与える有益な効果を後回しにすることになるので不必要で好ましくないと述べている。つまり、自民党の取った決断に対して、合衆国政府は非常な不快感を公式文書の中で表明したのである。
 そもそも三角合併がなぜ会社法の中に組み入れられたかと言うと、対日投資会議が「投資促進プログラム」の中で位置づけていたからで、文案はその方針に沿って作られた。
 では、対日投資会議とはどういう組織かというと、議長が総理で、副議長が経済財政担当大臣、つまり竹中平蔵先生がずっと副議長をやってきた。さらに事務局的な組織として対日投資会議専門部会がある。その委員会には、十三人の日本人が入っていて、座長が慶応大学教授の島田晴雄さん、またグレン・フクシマ氏の奥様なども入っている。
 さらに注目されるのは、日本国の会議であるにもかかわらず、「外国人特別委員」というのが置かれていることである。その筆頭がニコラス・ベネシュという在日米国商工会議所のM&A担当の委員長である。彼はJTBという会社を経営している経営者である。また、ロバート・フェルドマンというアメリカの証券会社(モルガンスタンレー)のエコノミストもいるが、彼は郵政民営化に関するNHKの討論番組に賛成派の論客として出演した。さらにサムスンの韓国人や、二人の外人弁護士もいる。こういう人々が対日投資促進プログラムを作り、日本の法改正や制度作りを提言し、会社法が制定されたわけである。
 一昨年六月二十八日付日経の記事に、「在日米国商工会議所の主要メンバー」が載っているが、その一番上にニコラス・ベネシュが対日投資担当として紹介されている。この記事によると、ベネシュが経営するJTBはM&Aを仲介する会社である。つまり、会社法によって三角合併が解禁されれば、自分の会社が儲かる仕組みになっている。彼以外にも、郵政民営化担当のアラン・スミス、教育担当のカーク・パターソン、医療関係担当にはガイ・ハリス、そして王恵民という中国人もいる。このように、在日米国商工会議所の中に「影の政府」のようなものがあり、いわば担当閣僚が置かれ、自分たちのビジネスチャンスを拡大するために日本政府に語りかけ、日本の法改正や制度設計に容喙しているわけだ。
 すでに貿易などの一般の経済投資にはあらかた手が打たれ、彼らが今狙っているのは医療と教育である。つまり今や日本人の心と体、命に関わる分野にまで彼らの手が及ぼうという最終段階を迎えているのである。

◆米国政府の「深い関与」

 以上の三つの諮問会議はいずれも総理直属で、官邸主導型政治を支えるいわば忍者部隊である。最後に、これらに深く米国政府が関与している事実を指摘したい。
 そもそも米国がいつからこういうことに目を付け始めたかというと、村山内閣の一九九四年十一月に第一回目の「年次改革要望書」が出されている。その中に、「Advisory Committees and Study Groups」という小見出しの個所に、ローマ字で「shingikai kenkyukai kondankai and benkyokai」とある。要するに十二年前から米政府は日本のいわゆる審議会政治を研究し、ここを上手くコントロールすれば、アメリカの国益を日本の内政に反映させることが出来ることに気付いていたのである。
 九六年版の年次改革要望書からは日本語訳が付いたが、まさに「審議会、研究会、懇談会及び勉強会等の透明性云々」という個所がある。そして「メンバー構成」として、「外国及び非政府組織(NGO)の参加」とあり、「外国の非政府関係者及び外国企業が審議会の委員またはオブザーバーとして参加することを認める」ことを九七年度末までに閣議で決定しろとある。先に見たように、これはもう実現されている。
 一方、今日、日本の法律を全部英訳する仕事が進められている。その推進部隊は内閣官房副長官補を議長とする「法令外国語訳・実施推進検討会議」であるが、その会議の有識者構成員の中にアラン・スミスという人物がいる。これは先の「影の政府」にも出てきた人物である。彼は一体何者かと言うとAIG、つまりアリコというアメリカ系保険会社の日本常駐役員である。また、アメリカ最大手の法律事務所の弁護士をしている外国人もいる。この二人が有識者構成員の中に入り、日本の法律の英訳を進めている。なお、なぜか法律の専門家集団である法務省はこれに関与せず、官邸主導で推進されている。
 この英訳作業にも実はアメリカ政府が関与している。二〇〇五年版の年次改革要望書の中に、「日本の法律の外国語翻訳」という個所があり、「(省庁が計画している)翻訳が終了するまで、日本にある外国企業(翻訳プロセスを監督する関連委員会を含む)と緊密に協議を続ける」とある。この「監督する関連委員会」が先の有識者会議である。
 では、なぜ日本の法律を英語にしようとしているのかというと、実はこれは弁護士業界の規制緩和と連動した動きである。昨年弁護士法が改正され、外資の法律事務所が日本人弁護士を雇うことが解禁された。すでにアメリカの法律事務所が日本に進出しているが、アメリカの弁護士は日本語や日本の法律を学ぼうという意思は全くない。だからアメリカの法律事務所は、法科大学院で促成栽培した大量の日本人弁護士の卵を大量に採用して、アメリカ人の采配の下に洗脳し、日本の企業や財界、あるいは地方自治体や政府機関に対して攻勢を仕掛けようとしているわけだ。その時、司令官であるアメリカ人が、日本の法律が英訳されていないと使い勝手が悪いということで、今から体系的に英訳させているのである。英訳された法律を楯にとって、彼らは法廷闘争を展開してくるはずである。
 
このように「年次改革要望書」を通じてアメリカ政府が外から圧力をかける一方、内側では有識者会議にアメリカ企業の役員が入り込み、内外から米国の日本改造が推進されてきたのが村山内閣以来の過去十年の動きである。日本人の顔をしているが日本人としてのメンタリティーを持っているのか疑がわしい人物、あるいは外国人そのものが会議のメンバーとなって、様々な「構造改革」と称して日本の改造を推進しているわけである。


《質疑応答》

●質問 「年次改革要望書」については、国会でも郵政民営化との関わりで質問されたが、それを新聞もテレビも一切報道していない。言論統制があるのではないか。

関岡 去年、解散になってから総選挙までの一カ月間のマスコミの論調や社説を追っていくと、不思議なことに、右の産経から左の朝日まで全て郵政民営化賛成であった。
 今、昼間テレビを付けていると、AIGとアフラック(アメリカンファミリー生命)が頻繁にCMをやっている。一般にCMは十五秒か三十秒ぐらいのものが多いが、一分ぐらい延々とやっている。つまり主婦やお年寄りに対して、医療保険の資料を請求せよ、請求すれば景品が当たるかも知れませんと宣伝している。注意して見てみると、夜の番組でも例えば「報道ステーション」は、AIGグループのアリコとアフラックがスポンサーに入っている。郵政民営化の背後にアメリカの保険会社の圧力があると言えるのかは多少疑問だが、民放が広告収入によって経営基盤が支えられているのは事実である。
 新聞も同様で、この手の広告は最近非常に多い。日本には国民保険制度があるが、今医療制度改革をやって、なるべく公的費用を抑制して行こうとしている。当然、国民は民間の医療保険に加入しようかという不安に駆られている。
 ここに、ある日の朝日新聞に載ったアリコの広告があるが、医療保険に入りなさいと宣伝している。新聞によって広告料は違うが、ある出版社の調べでは、二面ぶち抜きの広告の場合、白黒で六千万円、カラーは一億かかる。これが月に何回も出ているわけだから、アリコは朝日に対して月に四億か五億ぐらい払っていることになる。去年の選挙期間中、右から左までのメディアが体制翼賛的に「民営化賛成、法案を可決させろ」と主張した背後には、外資の広告収入が相当効いているのではないかと思われる。森田実先生の情報では、去年は五千億使ったという噂があるという。一回一億だから、五千億もあればいくらでも広告が打てる。しかし、彼らの狙いは(郵貯・簡保の)三五〇兆円だから、五千億はわずか四%で、安い買い物ともいえる。だから、まずメディアを検証しなければいけない。

●質問 竹中大臣がやっている地方交付税改革を見ていると、日本の国力を弱める戦略ではないかと思わずにはいられない。地方自治があるから日本は国力があるのであって、これは世界に冠たるものである。これを弱めることは日本の国力を弱めることになる。地方交付税改革は、そんなアメリカの戦略に乗っているのではないか。

関岡 ご指摘のように、そういう狙いもあるとは思うが、「年次改革要望書」には地方自治についての項目はない。だから、多分それは水面下で直接竹中さんの所に指令が行っているのではないか
 私がもっと不安に思うのは、竹中さんは自治体を会社みたいに捉え、財政破綻したら破綻処理をするための法制化をしようとしていることである。詳しいことはわからないが、自治体が財政赤字で破綻したら、倒産企業みたいに、例えばアセットをバラバラにして外資に切り売りするようなことを狙っているのではないか。つまり、M&Aなどアメリカの投資銀行の商売のネタを作り出すことにより、日本の地方のアセットを外資に食い荒らさせる筋道が今付けられようとしてるのではないかと危惧される。しかも、先ほど述べたように、規制改革・民間開放推進会議メンバーの八代教授は、もう過疎地にはいくら資本を投下しても産業は興らないから切り捨てろなどということを述べている。
 しかし、こうした諮問機関は税金で運営されている会議である。そうした公的資金を投じている会議にどうして民間企業の経営者とか、選考基準もはっきりしない民間人が入ってのさばっているのか疑問である。まず、この会議の正当性を問い直し、そこから見直していくことが必要である。
 一方、竹中さんはNHKの民営化をやろうとしている節もあるが、これも大変危険である。今や広告に頼らずに外資から中立でいられるのはNHKだけである。NHKは受信料によって国民が支えている唯一の民族系メディアの可能性がある。これを民営化したり、CMを流すことになれば、テレビ朝日がもう一つ出来るだけの話であり、国民の利益になどならない。

●質問 今年になって、耐震偽装やライブドなど色々な出来事が続いたが、その底流に流れるものをどのように感じているか。

関岡 一言で言えばパンドラの箱を開けたということである。例えば姉歯なる人物が偽装を始めたのは九九年と言っているが、建築基準法が改正されたのが九八年である。それによって大幅に建築基準が緩和され、ヒューザーとか総研とか訳の分からぬ人達が登場し、外国から安い建材を持ってきて、工期を短縮すれば儲かるという話が始まった。パンドラの箱を開けたのは建築基準法の改正だったといえる。
 しかし、それは元々は日本に木材をもっと輸出したいというアメリカの要望から始まったともいえる。当時アメリカにとって、日本が最大の木材の輸出市場であったが、もっと拡大したいということで、そのネックになっている建築基準法を「非関税障壁」だと称して、攻撃をかけてきたのだ。その合意が九〇年頃に外務省との間で成立したが、その後、阪神淡路大震災が起こり建築基準に対する見直し気運が高まってきたのを逆手にとって、法改正がなされてしまった。本当に震災の教訓から改正するのなら、本当は規制を強化すべきだったが、逆に大幅に緩和された。
 一方、ホリエモンが駆使した株の分割や株式交換も、先ほど出てきた対日投資促進プログラムの中で、ステップを踏んで解禁されてきたことである。そうした規制緩和をしなければ、そもそもライブドアや村上ファンドが急激に台頭することは制度上できなかった。
 規制を緩めれば悪い連中が出てくるのは当然である。その結果、被害を受けるのは無垢の国民なのだから、「日本はがんじがらめの規制社会」などと言われてきたが、性悪説に立つのはむしろ当然だと思う。
 ところがメディアは、規制緩和するときには、「不必要な規制は撤廃しろ」とか「官僚や政治家は口を出すな」と主張する。しかし一旦被害が広がり社会問題になってくると、手のひらを返すように、「政治家は何をやっている」とか「政府は不作為だ」などと批判する。しかしこれほど無責任で理不尽な話はない。結局、メディアも審議会のエコノミストや学者たちも結果責任を取ろうとせずに、責任は政治家や官僚に押し付ける。
 だから、まずは正当性のない人間たちが政治に容喙している現状を改めることが先決である。つまり、わけのわからない勉強会とか審議会とか有識者会議などに権限を与えないようにすることである。そのためには、意思決定の場を国会に戻す――つまり、国会に本来の権限を取り戻すことが一番大事ではないかと考える。
(文責・正しい日本を創る会事務局)