◆なぜ私は台湾や中国と関わるようになったか
私は日本という国と文化に対してこの四十年ほど、ずっと賞賛の気持ちを持ち続けてきた。私の父は軍人だったが、父の仕事の関係で私は幼少より台湾に住む機会を得、台湾の美しさに非常に感銘を受けた。当時台北市を見下ろす場所にある中国風の家屋に居を構えていた。
台湾で幼少期を過ごした関係で、私は中国文化に対して興味を持った。特に大学生の頃から中国の美術や詩などに尊敬の心を抱いてきた。大学を卒業した後、私は大使館の仕事に就き、一九七〇年の半ば頃台湾に戻ってきた。台湾に戻り、二度目の台湾生活を始めてから、自分が幼少の頃に住んでいて中国風の家屋だと思っていたものは、実は日本風の家屋であり、また詩や文化にもかなり日本のものが残っていたことが分かった。
この台湾での仕事を終えてから、私は北京でアメリカ関係のリエゾン・オフィス(代表事務所)の職を得た。ちょうど文化大革命の終盤にさしかかる頃で、中国の文化は攻撃を受けていた。私が興味を持っていた唐詩に対して、当時の中国人は興味を持っていないのでがっかりした。
◆経済的な改革開放は政治的な改革開放を意味しない
さて、一九七〇年代から八〇年代にかけてのアメリカの対中政策は、冷戦の最中でもあり、「ソ連との均衡を保つ」という戦略に支えられていた。特に七九年から八九年にかけては、米中の戦略的関係が非常に重要性を増してきた。例えばアフガンにおける戦略的・戦術的関係を共有するという点で、アメリカは中国の協力を得ていた。
八〇年代の?小平の改革開放政策によって、中国は単に経済的な関係だけでなく、外交や政治関係についても大きな変化があった。そして当時、中国が改革路線を採って、開放を進めてゆくことは、日本やアメリカにとって国益になる、という理解があった。
ところが、アジア太平洋地域における戦略的な文脈の観点から言うと、八九年から九二年までの三年間に二つの大きな出来事が起こり、大きく情勢が変化した。一つは八九年の天安門事件だが、特に政治的な民主化運動という意味で、同事件後、中国は進展が阻まれた。
もう一つの大きな出来事はソビエト連邦の崩壊である。その間、戦略的な関係という意味での日米中の三国関係の状況は大きく変わったが、しかしその大きな変化に対して、アメリカも日本もあまり注意を払わなかった。つまり理解していなかったということである。
まず八九年以降の数年間、日米両政権とも単純な一つの概念に基づき対中政策を考えていた。つまり、経済的な改革開放が進み、貿易なども自由化されていけば、それに伴って当然、政治的な開放改革も進むという考え方である。これは恐らく日米の政策立案者が考えたことだと思われる。
七九年当時、中国は年率一〇%から一五%の経済成長を達成する国になるだろうと予測したが、結局それは正しかった。私は九二年頃、アメリカの国務省で仕事をしていたが、当時の関係者の予測では、中国はこのような形で経済成長を遂げてきたが、一〇%から一五%という経済成長をこのまま右肩上がりで続けて行くことはできないのではないか。アメリカがいかに中国を奨励したとしても、どこかでその右肩上がりは止まってしまうということが予測されていた。しかし、経済成長という面で中国は、全く滞りなく一〇%から一五%のレベルの年率で今も成長を続けている。
一方、七八年以前の時代と比べると、文革後の政治的な抑圧は現在は少なくなってはいる。しかし、天安門事件が起きた八九年をピークとして、政治的な開放は実は下方に向かっていると思われる。
二〇〇六年の現時点で考えても超経済大国に成長しつつある中国は、軍事的にも並々ならぬものがあり、また政権運営もどちらかと言うと全体主義的・独裁的な国家運営がなされているというのが現実である。
◆二十一世紀は、中国がアジアにおける超大国に発展した時代
今日、中国に対する認識は、日米両国とも意見が二極化している。そのため、戦略的・ビジネス的・学術的・社会的な面において、いかに対中政策を組み立てていくかということについて、かなり意見が分裂している。一方、中国ではそういうことはない。日米どちらに対しても、どのようなやり方で外交を展開して行くかということについて、きちんとした考え方がある。
日米の未来の歴史家が二十一世紀を振り返るというテーマで世界情勢を見るならば、恐らく二十一世紀はまさに中国が新興国から発展してアジアにおける超大国になり、また世界を代表するような国になった、そうした発展が見られた国であったというのが歴史家の認識となるのではないか。
アメリカという国は必ずしも歴史の長い国ではない。その意味で、二十年、三十年、五十年というような長期的なスパンで歴史を見るという考え方に少し欠けた所がある。
一方、中国は五千年の長い歴史を誇る国である。その間、アジアの大国として君臨した時もあるが、外国からの侵略に苦しんだ時もある。また非常に野蛮な侵入を受けたり、国内の内紛や紛争に苦しめられたり、あるいは経済的な様々な変化もあった。中国はそういう栄枯盛衰の歴史を持っている。
現在の中国は二十世紀末から二十一世紀初頭にかけて台頭してきたが、この百五十年間、外国からの侵略や支配を受けたり、権力の基盤が弱まったり、といったようなことで、かなり混乱と混迷の時期を通り抜けてきた。結局、このような経緯によって中国共産党の新指導部は動機付けられ、それが原動力となって動いていると思われる。
◆「総合的な国力の向上」こそが共産党政権の正当性を裏付ける
周知のように中国共産党は、共産主義を普遍的真理として、それを広げようという考え方でやってきた。しかし九二年以降、?小平が行ってきたのは、中国的な色合いを持たせた社会主義だったと言える。その意味で共産主義の再定義が行われてきたと考えられる。?小平はこのように言ったと言われている。資本主義がどうとか社会主義がどうとか黒白つけるような議論はすべきではない。全体的な意味での国力が上がって行けば、それが私たちの求める中国の色合いがある社会主義であると。
この意味を理解することが非常に重要である。国力を総合的に向上させて行くことこそが共産党指導部の、あるいは共産党の思想の正当性を確立するための試金石であり礎であるということである。だから当然、中国の国家体制の正当性を証明するものは、単なる経済的繁栄だけではなく、軍事的な繁栄や戦略的な意図の繁栄なども含まれるということになる。
こうした文脈において、まず台湾問題はまさに共産党政権の正当性を証明するための試金石となる。台湾問題を上手く処置することは、無敵の地位を確立するための一つの材料なのである。換言すれば、中国の台湾統一の意図というものは、戦略的な目的というよりも、政権を運営していくための一つの戦術であると考える。
共産党政権が正当性を確立する第二の根拠は、中国が日本を凌ぐような形で自国の力を証明することである。つまり、日本に対してアジアの覇者は日本ではなく中国なのだということを認識させることである。
さらに、東南アジア諸国における影響力を更に高め、中国がアジアの覇者となるべき一番の地位を占めていることを認めさせることが、共産政権の正当性を根拠付ける第三のポイントだと言える。これは華僑など、東南アジア及び中央アジアにおいて勢力を誇っている人たちの力を借りれば可能である。それから、ロシアとの関係も大きなポイントになる。
このような私の見方に対しては、私の友人や知人の中には「余りにも反中国的な考え」との指摘があるが、決してそんなことはない。私は中国の民と文化を愛している。私が懸念しているのは指導部の認識である。それが中国にとって危険な要因であると考えている。
ともあれ、中国の指導部が何を動機として、政策を立案しているのかということを考えた方が今後の中国の動きが読みやすい。繰り返しになるが、経済的・貿易的・財政的な諸政策において、中国が今何を推進しようとしているかと言えば、包括的・総合的な国力の増進ということしかない。
こうした動機付けこそが、中国の行動を占う一つの論拠となる。私は二〇〇二年の時点で既にウォールストリート・ジャーナルのアジア版を初めとする十三ほどの雑誌や新聞に色々な記事を発表し、ある予想を立てた。それは何かと言うと、中国は北朝鮮の核兵器核開発問題について、きちんとしたアクションを取ることは絶対ないと述べていた。同様に、中国はイランの核開発疑惑についても何らかのアクションを積極的に取ることはないと思っていたし、台湾の民進党政権に対して何らかの動きを取ることはないということも、数年前からずっと予測していた。
中国の政策が今後どうなるかを予測するには、中国の指導部が最も意図しているのはアジアにおける国力・覇権の最大化であり、それは国内権力の最大化を基盤として支えられるものであるということを知ればよい。もちろん、経済成長を伴いつつ、それを目指していくことが中国の狙いであると思われる。
◆一九三〇年代のドイツを想起させる中国の現状
では、このような中国に対して、いかなる対策を取って行くべきだろうか。それは、まさしく日本とアメリカに突き付けられた命題である。
日本とアメリカは簡単にこう言うこともできよう。中国がアジアに台頭してきて覇権を取っても構わないではないかと。これは要するに、戦争になるよりは、中国にやりたい放題やらせておいた方がいいという考え方である。
しかし、私自身も歴史を学ぶ者でもあるが、今中国がアジアや世界において台頭し、実力を付けていく姿に、少し不吉な予感がする。つまり、三〇年代にヨーロッパでドイツが力を付けてきたのと非常に類似した状況が見られるからである。中国の台頭によっていずれ世界が翻弄される可能性がある。
キッシンジャー元国務長官の見解によれば、西欧の民主主義国家は平和を何よりも一番大切に思っており、そこに付け込んだのがナチス政権である。ナチスは自分たちの国益のために、民主国家の平和に対する思いを最大限に活用したのである。
第二次世界大戦の直後、イギリスのチャーチル首相は、この戦争ほど回避できる可能性が高かった戦争はなかったと回想している。仮に三〇年代初頭、西欧の民主主義国家がドイツの勢力拡張を食い止める何らかの対策を取っていれば、恐らくドイツ国民自身、ナチスの台頭を許すことはなかったであろうとも述べている。
実は、現在の中国指導部の中にもある派閥があり、その人々は経済力の繁栄や社会的な安定を、軍事力の拡張や政治的なことよりも重視している。そうした穏健的な派閥の中心となっているのが温家宝首相であると考えられる。私は胡錦濤総書記も穏健派に属するのではないかと考えた時期もあったが、二〇〇四年、胡錦濤は軍事委員会の長も兼ねると発表された。その意味で、胡錦濤の考える国益は、軍事力の増大に依存するものではないかと思われる。
◆日中対立の最大の原因は何か
私の個人的な意見を言うと、国際社会において、中国がより責任ある当事者となるよう奨励するための最も効果的な方法は、軍備や政治的な意図の拡張が最も大切なものではないことを彼らに示すことだと思われる。逆に、日米両国にとって最も良くない方法は、中国に対して宥和的な政策をとることであろう。
このことは、ここ数年、中国首脳部が日本に対して非常に敵対心を示していることとも関連する。特に日本の国連安保理の常任理事国入りに対して、中国は強烈に反対した。実際、日本は国連予算の分担金は世界で二番目に多く、アジアの最も強大な国として常任理事国入りは考えられるべきことである。しかし、例えば唐家?外相のスポークスマンは、日本が常任理事国になってはいけない二つの理由をこう示している。まず安保理は普通の企業の取締役会とは違うということ。つまり、金銭的な貢献度に応じて地位が与えられるものではないということである。二つ目は、もし日本が国際社会でより大きな役割を果たしたいのならば、きちんとした歴史認識を持ち、十分な理解を示すことが必要であるというのである。
このように、ここ二、三年、特に日本に対する中国の敵対意識は強くなってきているが、この一つの背景には、日本が安保理の常任理事国入りをしたいという意思を持ち、なおかつ日本が国際社会でより地位・信用を高めているという現実がある。中国の日本への敵意は結局、そうした日本の動きに対する警戒心の表明だと思われる。確かに日中間には、靖国参拝、歴史認識、教科書問題等々、様々な摩擦があるが、一番のポイントは日本が安保理の常任理事国になりたいと思っていることではないかと考えられる。
なお、中国は国連に対する経済的な貢献度は世界で十四位である。そのため、非常に経済的な貢献度が高い日本に対して劣等感を持っていると推測される。だから、その点ではなく、他の部分を攻撃することによって、何とか日本の常任理事国入りを防ごうと努めているのである。
二〇〇五年の前半頃、中国の指導部は、こういうことも言っている。日本の常任理事国入りを望んでいないのは、単に政権の意図ではなく、中国人民がそう思っているのであると。そして二千四百万人もの国民が、日本が常任理事国にならないことを望む嘆願書に署名したということを突き付けている。もちろん、実際には中国人民はそんな問題は気にしていない。そんなことなどどうでもいいと思っている。これは結局、中国指導部は中国人民の意志に応えて、日本の常任理事国入りを防ごうとしているのだ、ということを示すための一つのポーズであると考えられる。
中国の人々はインターネットのブログやウェブサイトなどで、様々な情報源を使い日本攻撃をしているが、昨年、私が行った調査研究によると、その情報の元々の出所をたどっていけば、中国政府の関係者につながるのではないかと考えられる。
これはあくまで私の仮説に過ぎないが、中国指導部の考える日中関係の最も理想的なモデルは次のようなものだと思われる。まず、日本に対する優位性を確保し、アジアにおける中国の第一の地位を確立する。次に、日米同盟関係の限界を探ること。つまり日米関係にも限界があるということを知らせることである。敵に相対する時には、敵を同盟国から引き離し、孤立させていくのが得策である、と孫子は兵法の中で語っている。
◆日米は他の民主主義国家と協力して中国をコントロールせよ
そろそろ話をまとめたい。結局、日米両国が中国に対して穏健で柔らかな政策をとっていくとしても、なおかつ歴史認識や靖国神社の参拝問題に関して、日本が中国の主張に屈してしまうとしても、中国の対日批判や米国に対する悪い動きは消えないだろう。また新たな問題を見つけてきて、それを非難の糸口とするであろう。
中国が全体主義的な独裁政権としてアジアや世界に君臨していく事態を避けるためには、日米が他の民主主義国家と協力しながら、対中政策を考えていくことが必要である。例えばオーストラリア、シンガポール、インド、そして東南アジアの国々や台湾などと手に手を取って、中国をコントロールして行くという方向が望ましい。
もちろん、そのためには日米関係の緊密な協力が必要である。そして、例えばWTO(世界貿易機関)の様々な規則の違反や財務・金融関係の違反などについて、中国に対して指摘していくことが大事である。ロバート・ゼーリック氏もいなくなったので、そうした取り組みも可能であろう。
また同時に、日米で協力して、台湾が中国からある意味で独立的に発展していけるような方法を探ることも必要であろう。台湾は台湾の道を行く、というような形で継続的に支持していくことが必要だと思われる。
《質疑応答》
●質問 中国は貧富の格差が非常に大きく、農民主体の暴動が年間数え切れないほど起きている。こういう内部矛盾が蓄積して、中国共産党の強権だけでは収まらないような事態が起こるのだろうか。
○タシック マスコミではかなり大きく社会不安や混乱が取り上げられているが、少し誇張し過ぎているのではないか。中国当局が発表した暴動関連の件数は八万七千件との情報があり、公安関連のWEBサイトを初め他の情報関係も探ってみたが、そうした数字は見つからなかった。暴動の捉え方にもよるが、反乱分子による暴動はそれほど多くはないのではないか。
そうした暴動に対する政権の対処方法は、指導者を厳罰に処するというやり方が一般的である。つまり見せしめである。他の活動家に対しては、どちらかというとあまり厳しい措置はとらない傾向がある。
中国では伝統的に「信訪」と称して、人々が首都を訪れて政府に嘆願書を提出するという習慣がある。二万から三万の人々が毎日のように北京を訪れ、嘆願書を提出していると言われるが、ワシントン・ポスト紙にその実態が載っていた。それによると、政府の具体的な措置が取られる確率は非常に低く、わずか二、三%ほどでしかない。これは政府が暴動や社会不安をどれだけ真剣に考えているかの一つの証左と言えよう。つまり、もし政府が社会不安の危険性に警戒心を抱いているとすれば、何らかの苦情を取り上げる仕組みを作るはずである。だが、中国政府はそうした仕組みを作っていないし、誠実な対応をしていない。
恐らく中国政府が真剣に懸念するとすれば、暴動が一つの地域にとどまらず全土に拡張してゆく状態、あるいは地域同士が協力して、反政府的な行動に発展する場合ではないか。そうした状態は今のところはない。
なお、法輪功は全土に広がっているので、全国的に抑圧するというやり方を採っている。メンバーであるというだけで投獄されてしまうという状況である。
●質問 まだデモは単発的だという指摘だと思うが、経済が拡大すれば恐らく地域も連携して、中国の全地域の貧民層が急速に繋がってくる可能性は極めて高いのではないか。その時期はいつ頃になると思うか。それとも、北京政府はそれを押さえ付けられると考えているのだろうか。
○タシック 北京政府はそうした抑圧関係の政策に関しては非常に高度な仕組みをもっており、非常に長けている。例えばインターネットにおける情報流布に関して、テキストメッセージなどを流用して発信できる。また、電話通信も使うことができる。例えばボイス・オブ・IPのバージョン6が新しく出ており、これを中国は推進している。つまり、インターネットのプロトコルを通じて電話を全国的に展開することによって、通信内容を一つの所にプールしておけるのだ。言ってみれば盗聴に等しい行為であり、人民の間で交わされる連絡などの内容が政府に筒抜けになってしまう。中国政府は国家体制として独占的な通信インフラを持っているわけである。
仮に反政府的な活動を起こすとすれば、どこかで組織的な取り組みをしなければいけないが、しかし通信網は全部使えない。だから、他の通信手段を考えなければいけないが、中国の現状ではそれは非常に難しい。
その一方で、中国政府に対する不満が募ってきているのも事実である。貧富の格差の問題もあるが、十年、二十年後に中国全体に影響が出るような事態が起きている。今後、大きな社会的な暴動が起こる原因は必ずしも経済格差だけではなく、むしろ公衆衛生面での問題である。例えば水不足や汚染問題、あるいはSARSのような伝染病が蔓延する状況の中で、政府が無策で何もしなければ、そこで人民の怒りが爆発する可能性がある。
しかしその際、暴動や反政府行動が成功するチャンスがあるとすれば、指導部つまり中国共産党政治局において対立が起こる時である。実際、二〇〇三年にSARS危機が起きたとき、温家宝首相と胡錦濤国家主席は、江沢民前国家主席の取り巻きの人々に責任を転嫁した。こうした事態は、指導部内での分裂につながり得る。そこが付け込む隙になると思う。
●質問 どうしてアメリカは日本の国連常任理事国入りをサポートしてくれなかったのか。また中国政策については、アメリカも日本と同様、経済界の影響力が強いように思われるがどうか。
○タシック まず、最初の質問についてだが、残念ながら私はこの問題に関して造詣が深くはない。しかし、確かにアメリカ側が日本の安保理常任理事国入りに関してはっきりとした形で支持しなかったのは非常に遺憾に思っている。支持していなかったわけではないが、少し生ぬるい感じであまり強力に前面に押し出していなかった。私の親しい人がリチャード・アーミテージ前国務副長官から聞いた話では、国連の常任理事国になりたいということに関して、予め日本の外務省からアメリカに相談がなかったということが伝えられている。アメリカは国連改革に関してやりたいことがある。財政上の基盤の改革、組織内の不正・腐敗の撲滅、組織の合理化、それから安保理の拡張も考えている。
一方、中国政策に関して財界の影響力が日米共に強いという指摘は、全くその通りだと思う。私は日本の状況を必ずしも把握しているわけではないが、少なくともアメリカの財界の動きは、企業活動の一環として中国で何をやっても許される。中国に対して政府が何か差し止めない限り何をやってもいい――という考えが財界にはあるようだ。
そうした中で懸念されるのは、軍事目的に転用できる高度な技術が中国に供与されてしまう危険性があることだ。日米が世界の中で指導力を発揮するためには、そうした技術が必要であるが、そうした技術を中国に供与することにより、リーダーシップを中国に奪われてしまいかねない状況が予測される。中国は先端技術の面でも躍進しており、日米は技術的な産業基盤を次第に失いつつある。特にアメリカに関していえば、中国の攻勢に対して、技術超大国としての地位を保てなくなるのではないかとさえ危惧している。
その一方で、いわゆるオフ・ショア開発など、海外での財界の様々な事業活動を支援する動きが日米にはある。例えばIT関連の最先端技術の開発センターなどが中国に出来ることによって、中国に技術を供与しているわけだが、中国ではそれを自分たちの国益のために利用する可能性の方が高い。中国における様々な外国の製造会社の生産拠点がサービスする相手は結局、国内であって国外ではない。特に自動車産業でその傾向が強い。日米が技術供与した部分を上手く利用されている。なおかつ、より外国系の自動車企業に対して規制がかかり易い状況になっている。日米の自動車企業が中国の生産拠点で製造している自動車に対しても規制をかけている。その上、設計や技術的な機密を盗んで、それを国内産業の保護に利用している。
こうした中国の動きに対しては、日本では外務省の圧力よりも経済産業省の圧力の方が効果があるのではないかと思われる。一方、アメリカは少し状況が違う。商務省が実は財界の「ひも付き」になっており、財界の言うことをヘエヘエと聞いているような現状になっている。(文責・正しい日本を創る会事務局)