◆北朝鮮の核実験にみる各国の思惑

 佐藤 今話題の北朝鮮の核実験・核開発の問題と日米安保の問題について、私なりの見方をお話したい。まず北の核実験はどんな思惑を持っているのか。
 一番大事だと思うのが中国。朝鮮半島で核兵器を持つ国が出来るということは絶対容認できない。それで唐家セン国務委員らが北朝鮮に乗り込んだ。無駄ではなかったというのが中国側の評価のようであるが、簡単に説得には応じなかったようである。
 中国のもう一つの考え。北朝鮮の核保有は容認出来ないけれども、同時に朝鮮半島で混乱が起きて、それが中国に波及するようになったら困るという意識がある。何も難民の流入だけではなく、中国は国内的に大変な混乱要因をいま抱えている。貧富の差、地域的な差、数多くのデモ、あるいは事故がある。従って胡錦濤政権を安定させていくためにはあらゆる混乱を避けたい。そういう意味で北をぎゅっとやりたいけれども、それが暴発して国内に跳ね返っては困る。その意識が北に対する説得力の限界になっている。今回それが非常にはっきりした。
 次に大事なのは韓国。盧武鉉政権は、いまは非常に迷っている。金大中、盧武鉉ときたいわゆる太陽政策の失敗が今度のケースで明らかになった。韓国内世論も、単に今の野党だけではなくて心ある人の中から批判が出てきている。盧武鉉政権の支持率が十%台まで落ちてきている。今後は来年末に大統領選挙、再来年の二月に交代という政治日程だ。
 どうもここ数年、韓国は中国に向かって少しずつ漂流している。しかし今度中国が断固とした態度を北に取った。あるいは安倍総理が訪中した時、はっきりと未来志向を共同文書の上ではあるが出してきた。それに対して韓国側はまだ歴史的なことについてのこだわりは深い。胡錦濤政権はかなり政策転換をしたが韓国側ははっきりしない。
 一方、ロシアは正直、朝鮮半島の問題にそれほど強い関心は示していない。ただ時々北朝鮮の呼びかけに応じて、ロシアから物事を発表したりする。推測であるが、今世界にある核問題はイランと北朝鮮。国連安全保障理事会の常任理事国として、ロシアはやはりその両方を扱わなくてはならない。その中でイランとの関係は本来深い。他方で安保理常任理事国としてアメリカとの駆け引きがある。プーチン政権は、かつての米ソ関係のように、願わくば二極に戻したい。少なくともアメリカとの関係で、より対等な地位に立ちたいという思惑がある。それで時々北朝鮮の問題について意見を言うということではないか。
 さてアメリカ。イラクそれからアフガニスタンの両方とも泥沼状況になりつつある。特にイラクは酷い。実は先日、ジョージ・ウィルというアメリカの保守本流と言われるコラムニストが日本に初めて来た。その彼と私が一週間付き合って旅行していたある朝、彼は「昨夜寝られなかった」と言う。フィアスコというアメリカの国防総省を長く担当していた記者が書いた本に、イラクにおいてラムズフェルド、ウォルフォウィッツを初めとして、いかに失敗したかということを克明に書いてある。彼は出版前にその本を貰って読んで寝られなかったという。後で私にそれを送ってくれたので読んでみた。日本人の立場からも、「えっ、こんなブッシュ政権と付き合っていたのか」と思わずにはいられなかった。
 その後、今度は、ウォーターゲート事件を扱った有名なボブ・ウッドワードが『ステイト・オブ・ディナイアル』と言う本を出した。いずれにせよ、よく調べてものを書くマスコミ人が、いかにブッシュ政権がイラク問題できちっと対応していなかったかということを書き出している。そこへ現実問題として月間で六十名、七十名、八十名という米軍の死者が出て国内でも批判が高まってきている。予備役もどんどんかりだしている。
 従って北朝鮮から見れば、アメリカは軍事的にはもう手一杯で動けないという思いがあるので、動くのはちょっと待とうということになる。
 それからもう一つのイラン。アメリカから見れば明らかにイランの方が政治的には重要である。イスラエルとの関係があり、イラクも同じシーア派同士。ペルシャ人とアラブ人の違いとよく言われるが、少なくともイラクの混乱をより難しくすることができるのがイラン。核開発では北朝鮮と差はあるが、政治的にはイランの方を重視する傾向がある。
 それから中間選挙。共和党が、ブッシュとの距離を保つことで生き残ろうとしている選挙区も出てきている。ブッシュ政権にとっては大変な選挙。そしてその先は大統領選挙。いま共和党の政策をやっている連中は、みんなマケインを支持するとか、もう次の誰の政策ブレーンになるかを議論し出している。
 何でこのようなことを申し上げたか。それは、アメリカにしても韓国にしてもしばらく動けないのではないか。アメリカは「六ヶ国協議」で米朝協議をやり活路を見出すかも知れない。現に上院では、外交委員会の共和党・民主党両方のトップの人達が、北朝鮮との二国間協議をやれと提唱している。もし北朝鮮と二国間協議をやって、また裏切られた時には打つ手が無い。だからブッシュ政権はやらないと言っている。
 北朝鮮に対しての経済制裁は、かなり効くのではないか。中国もかなり金融面で引き締めをやっているようである。経済制裁は、効かないと言われているが、中国、あるいはロシアが、国際社会との関係である程度のことを協力してくれば効いていく。従ってここから先は北朝鮮の政権がどれだけもつか、あるいは将来の可能性として暴発するか。アメリカも韓国も大統領の任期が来年いっぱい。その状況下で、どうアクションが取れるのか。
 一方は封じ込め、一方はそれに伴う緊張がずっと続いていくと考える。そこから日米安保の重要性が出てくる。

◆日米安保、四つの重要性

 日米安保は、四つの重要性を持っている。?日本の防衛の為。?朝鮮半島の安全保障の為。?アメリカの核抑止力を確保する為。?アジア、太平洋、インド洋、中東湾岸に繋がる米軍、特に海軍の存在を確保する為。従来、北朝鮮の問題が起きるまでは、実際に紛争が起こりそうなところは日本ではなくて朝鮮半島だという考えがあり、?と?の順序を逆に言っていた。安保条約では、日本防衛の為の第五条より、極東有事の為の第六条の方が重要というのが日米双方の安全保障担当者の共通の意識だった。
 ところが、ここへ来て北朝鮮は、テポドン、ノドンなどのミサイル開発を行ない、日本に届くミサイルを二百発ぐらい配備しているという。そういう状況の中で、日米安保条約の日本防衛の為の重要性が改めて意識されなければならないだろう。
 ちなみに、北朝鮮のミサイル攻撃に対し取り敢えずの考え方は、ミサイルが飛んできたら海上のイージス艦から迎撃ミサイルを撃つ。これをスタンダードミサイルスリー(SM3)という。それで駄目なら地上からのパトリオット、パックスリー(PAC3)で撃つ。的中率の問題は横に置いて仕組みとしてやっている。ところが日本にいま何があるのかと言えば、横須賀に最近配備されたアメリカのイージス艦一艘だけ。日本はイージス艦を四艘持っているけど、これから前倒しして迎撃ミサイルを使えるようにしようとしているところだ。
 それから地上配備のミサイルは、嘉手納にこの間パトリオットミサイルが配備された。これも運用開始は年末ぐらいという状況。日本も前倒しでやると言ってはいるけれども、これからである。実はアメリカが日本防衛の為にも先行している。この事一つとっても、日本によって日米安保条約がいかに我々に安心感を与えるものであるかということが改めて認識される。
 それから朝鮮半島における安保条約の大切さがある。沖縄返還交渉時でも、核抜き本土並みに返してもらうに当たって、朝鮮半島問題を積極的に考えるという合意までして実現している。南北が軍事的に対峙している朝鮮半島は、安保条約の運用上で一番大事な地域だと思われていた。この点は今も変わらないし、日米安保の重要性は高まっていると思う。
 なぜかと言えば、韓国政府が米国離れを始めて、いわゆる推定千キロの誘導ミサイル、巡航ミサイルの実験に成功したというようなことがあった。それに、自主防衛の一環として有事の時の指揮権を韓国に取り戻したいと言ってきている。そして盧武鉉政権は、一方で北に対する抱擁政策、サンシャインをやりながら、同時に軍事的な独立、自主防衛を強く求めている。それに対しアメリカは、そんなら有事の指揮権を二〇〇九年に返すと言った。韓国はちょっと早すぎるから十二年にしてくれと言う。
 アメリカの立場から見れば、そういう状況の韓国とやるよりは朝鮮半島有事の時はやはり日米安保条約の運用によって対応したほうが、抑止力は少なくとも維持できるという考えになってきている。その意味でも、日米安保条約の重要性が改めて高まっている。
 もう一つ。この点は非常に大事である。アメリカの艦船が確か十七艘か十八艘、米軍の空母も含めて日本に来ており、日本はいわゆる母港化している。もう二十艘近くになっているかも知れない。しかも横須賀にいる空母は二〇〇八年には原子力空母にも変わる。湾岸地域で何か起きたとき、カリフォルニアのサンディエゴから走ってくるのと、横須賀、佐世保から行くのとでは、時間もコストも全然違う。
 ASEANにとっても米軍の存在は非常に重要である。特に最近であればフィリピンにおけるゲリラ対策、インドネシアの安定のために役立っている。それができるのはなぜか。米軍が日本にいるからだ。それを東南アジアの人達に忘れてもらっては困る。
 しかも、横田はいざとなれば大変な空輸基地、それに嘉手納もある。アジア地域でB52が着陸できる所は、日本で言えば横田であり嘉手納であり、そして今は民間になっているけれども、フィリピンのクラーク空軍基地。それからタイにあったウタパオという基地、それからグアム。それくらいしかない。いかに日本の基地が米空軍の戦略的運用に大事であるかということがわかる。

◆基地再編と集団的自衛権

 最近、日本で言えば基地の再編問題、普天間問題での日米合意ができたが、実はこれには他の意味もある。あまり日本で語られていない部分が、自衛隊と米軍の機能統合。中国の潜水艦が日本の領海を侵犯したとき、日本の自衛隊はそれをきちっと追いかけた。なぜ出来たか。その前段階でアメリカが追いかけており、それと連携ができたからである。海上自衛隊と米海軍は冷戦時代からソ連の潜水艦を追いかけることを共同でやっていた。かつその日本海は、日本の海上自衛隊が分担していた。従って大変な連絡体系があり、もう一体化している。同じことが航空自衛隊でも言える、最近非常に緊密になってきている。
 私が一番大事だと思っているのは、実はアメリカの陸軍の指揮機能が座間に来るということだ。そういう意味では航空自衛隊のレベルでも指揮機能がさらに緊密化する。陸上自衛隊は、今まで米軍と関係がある程度しかなかった。今度は米軍の指揮機能が一部座間に来る。そこへ日本の陸上自衛隊の指揮機能も行く。初めてその指揮系統が一本化していく。
 そういう意味で私は、日米合意がお互いの機能統合、特に指揮レベルの機能統合が深まると思っている。長い目で見て非常に大事なことである。これが全部完成するのは二〇一四年。中国が日本の経済力に追いつくのは二〇二〇年とすれば、その五、六年前には日本の自衛隊と米軍の機能面での統合がさらに進んで行く。その中で、核抑止力の問題も考えられてくるという時代になる。
 それから集団的自衛権について、私は解釈を早くもう少し弾力的にしてもらいたいと思っている。ただ、なかなか政治的にも法律的にも難しいところがある。これの議論を進めていくためには、日米同盟協力、国連PKO、多国籍軍、有志連合の四つに仕分けて考えることが大事ではないか。
 よく話題に出るのは、朝鮮半島有事の時に日本海で活動する米軍が攻撃された時、海上自衛隊は守れないということだ。
 国連PKOも、例えばかつてのカンボジアあるいは今のゴラン高原で、日本の自衛隊が一緒に働いている他のPKOが攻撃された時に、それを守れない。これは長年国連でも問題視されている。でも日本に出て貰うことは大事。だからみんな我慢して日本には特別の条件を認めてくれている。私は国連にいる時、非常に恥ずかしい思いをしていた。
 次の多国籍軍。本当は安全保障理事会の決議に基づいて出ている多国籍軍。多国籍軍とPKOの違いは、PKOは国連の安全保障理事会が作る。一番上の責任は国連事務総長。それに対して多国籍軍は、安全保障理事会がこういう行動の必要を認めると言って加盟国に呼び掛けて、それをやってくれる人が出てくる。今のイラクにおける行動はそれだと思う。したがってグリーンベレーはかぶっていない。安全保障理事会の決議に基づく多国籍軍に参加する場合、例えばイラクで日本の治安を守ってくれていたオランダ軍、次のオーストラリア軍が攻撃された時、自衛隊はその人を守れませんと言うのは国際的には通らない。
 それから有志連合。これは安全保障理事会の決議が無くても、有志連合で軍事的に行動する。そのとき日本の自衛隊がまず参加できるかどうか、国内的に色んな議論があることだと思う。
 いずれにせよ、その集団的自衛権は、国連のPKOの時の段階ですら考えてかなければならない問題である。これをどうやっていくのか、個人的には国会決議でいいではないかと思っている。憲法に詳しい方は憲法を改正しないとできないというが、それは政治的に判断すべきことだろう。

◆非核三原則と核抑止論+ミサイル防衛

 さて、最近話題の非核三原則。これについて議論し直すということは、ある意味で大事だと思っている。なぜかというと、今までは単純に日本は唯一の被爆国だから核兵器は持たないという説明であった。もうその議論自体があまり対外的には説得力はない。だから核抑止論、ドミノ論が出てくる。
 例えばシンガポールのシャングリア、ロンドンの戦略問題研究所が毎年シンガポールで会議を行っている。第一回目の会議の時に、リー・クアンユーさんが日本はあまり信用できないというようなことをディナーのスピーチで言った。これが、日本は核兵器持つかも知れないという感じで受け止められた。細川内閣の頃、アメリカのペリー国防長官が、理論的に言えば日本が核武装する可能性は排除できないというようなことを言った。キッシンジャーもこれをずっと言い続けている。
 日本の国民には、駆け引きに対して嫌悪感に近い国民感情がある。核抑止力でよく言われるのが軍事的な戦略的縦深性。今の核抑止力は、攻撃されたら反撃する。それが怖いからこちらも攻撃しない。日本のように細長い国では、例えば東京と大阪だけやられたら壊滅になる。そのようなところでは、本当は地上配備型の独立した核抑止力は有効ではない。なぜなら撃ち返すという場面がない。外国の専門家も戦略的縦深性がない国は、独自の核保有をしても、それ自体が叩き返すという可能性が小さいがゆえに、抑止力を構成できないという議論がある。
 それから最近核兵器は、途上国の政治的地位を得る為、あるいは発言権を得る為の一つの武器になっている。北朝鮮の場合も明らかにそうである。日本にはその必要はない。もっと別な意味で堂々と世界に存在感を示している。というわけで、日本を認めて貰うために駆け引きを持つ動機はどこにもない。そのことを理解したうえで、なぜ日本は核兵器がいらないのかという方向に持っていくことが結局信頼性に繋がって行くのではないか。
 駆け引きは、核保有のコストという面からも必要ではない。何もお金のことだけではない。もし日本が核保有を目指すとなると、まずアメリカの協力が得られない。それどころかアメリカと中国が手を結んで、それを阻止することになるかもしれない。そういう意味でも孤立しかねない。そういう政治的あるいは戦略的コストもある。これはあまり口に出して言うことではないとは思うが、議論するときは分かっている必要がある。
 核抑止論は、基本的に曖昧さを残したものである。実は核抑止論が効いたということを実証することはこの過去の冷戦時代を通じても出来ない。米ソ間では確かに効いていたと思っているだけで、なぜ効いたかという話はあまりない。
 例えば、日本がアメリカによる抑止力の影響を受けるという時は、日本のアメリカに対する信頼性もなければならない。また二国間の抑止力の時は、相手に攻撃されたら叩き返すというお互いの意識が抑止力になる。昔、米ソの間では、時々核サイロの蓋を開けて相手に見せる。そういう長年の戦略交渉の上に、米ソ間にはある種の信頼関係があった。
 アメリカと北朝鮮の間にはそれがない。北朝鮮はおそらく自分が攻撃されるのは平気で、一発だけやるかも知れない。抑止論が効かない相手に対しては、最悪飛んできたものを叩き落とす。それがミサイル防衛。私は長いこと核抑止論とミサイル防衛とはセットで考えている。そういう中で日本は、非核三原則とセットの形でアメリカの拡大抑止力に依存するという形を取っていくのが一番政策的に安定しているのではないか。
 それから核持ち込みと事前協議。これには日本とアメリカとの間で明らかに解釈の違いがある。アメリカ側は、核兵器を積んだアメリカの潜水艦なり、空母なりが日本の中に立ち寄るだけなら核の持ち込みではない。従って事前協議の対象ではないという考え。日本政府は事前協議の対象とし、双方の考えはずれたまま。ただ突然この問題が議論の対象から消えていく。一九九一年、ブッシュ大統領が地上配備型の戦術核、海上配備型及び航空機に載せる戦術核を全部引くという決定をした。その結果、論外になった。
 仮に日本に核兵器を持ち込んで、抑止力として活用するとしたら、日本の陸地には戦略的縦深性がないので、結局、海上配備型としてアメリカの潜水艦、空母に頼らざるをえない。従って、米軍にもう一回戦術核兵器を積んでくれとなる。となると今度は、正面から事前協議をしたらYESと言え。あるいは従来のアメリカ側の解釈で立ち寄ることを日本は公式に認めてくれとなる。非核三原則の議論には、そういう問題のあることを忘れないようにしてほしい。どうも最近の議論にはそれが抜けている。

◆拉致問題と「六ヶ国協議」は繋がっている

 それから最後。私は早くもう一回非常任理事国に立候補をすべきだと思う。非常任理事国の任期は二年。今の北朝鮮を巡る「六ヶ国協議」の中で、米中ロは常任理事国、常に安全保障理事会にいる。韓国は潘基文さんが事務総長になり、決して韓国政府の代表ではないがいろんな形で韓国との繋がりがある。すると日本だけが外に出ることになる。
 イランの「六ヶ国協議」からも日本ははずされている。この「六ヶ国協議」というのは英仏独と米中露。簡単に言うと、北の問題もイランの問題も、両方ともに発言権を持っているのは、米中露。そういう意味では、日本は当然両方に入っていれば両方に意見を言えることになる。
 拉致問題について、私は主としてアメリカ人と韓国の人に、「六ヶ国協議」が上手く行ったら、最後は日本の方へポッと顔を向けてお金を出してくれと言うだろう。だから日朝の間の合意があって日本が北朝鮮にお金を出すというのは、お互いの国交が正常化されてからだ。それが約束だ。国交正常化の最大の前提は拉致問題の解決。そういう意味で拉致問題と「六ヶ国協議」は繋がっているという話を繰り返ししてきた。しかし、ニューヨークの国際問題をやっているような人ですらそういうことを知らない。だから、このポイントは、日本が言い続けていかなければいけない。
 それと核兵器の抑止について。非核三原則を持つ日本が、ある意味で説得力になる可能性すらある。核兵器を多く持つ国がイランや北朝鮮に対して核兵器開発をやめろと言うよりは、それを持たない日本が、アメリカの抑止力と組んである意味で安心感を得ている。だからあんたもそうしろよと言った方が、強い説得力になり得る。それにODAをつけたりすればさらに効果はある。そういう意味では非核三原則も戦略的に使える。同じように北朝鮮に対し、将来あり得る経済支援の問題も結びつけていく。それには国際的に説得力のある論理が必要である。日本は、そこを固めて言い続けていくことが重要である。


(質疑応答)
●質問 中川政調会長の非核三原則見直し発言を新聞は非常にエキセントリックに書いていたが、核の持ち込みも選択肢の一つとして議論をやろうという提案ではないか。
○佐藤 中川先生の言われたことに異論はない。一つお勧めしたいことは、一回きちっとその旨を英語で書かれて、どこかに出されたらいい。とにかくマスコミの中には、書き飛ばしたり悪い方に解釈する人がいる。例えば、日本で憲法改正の議論が出た途端に日本は右傾化するのではないか、日本は再軍備するのではないか、とかと。自衛隊の話を聞けば、今はもう一国の再軍備ではないということの典型が日米間ではだんだん実現していることが分かる。国際世論というのは、勝手に解釈する性格があるので、きちっと説明をする。あるいは主張を誤解の無いよう論理を書かれて出すといいと思う。
●質問 中国も明らかに今回は強い態度に出ているが、「六ヶ国協議」が再開されても北は核武装の小型化とかいろいろやっていくという話もあるが。
○佐藤 今度の安全保障理事会の決議案は非常に大事である。北朝鮮がどこまで進んでも最後には戻すこと。従って中間的妥協は絶対にしてはならない。それから経済制裁は本当に効くと思う。それによって北朝鮮の体制がどうなっていくのか。軍が追いつめられていくと思うが、封じ込めとして日米安保における抑止で行くことが一番大事ではないか。それを中国にも理解してもらうべき時が来たのではないか。
●質問 韓国の米国離れという話。今回の北朝鮮の核開発を批判すると同時に、いつの日かアメリカの支配から脱却して、朝鮮半島を一つにしたいという意識が強いのでは。
○佐藤 朝鮮半島を統一する話と、大陸に帰属する話とはまた別の話。中国との間でも歴史問題がある。韓国の世論はかなり揺れている。盧武鉉政権は率直に言って左に進んでいる。盧武鉉政権でなくなればまた変わってくるだろう。もう一つ、いずれ中国との関係でも失望するタイミングがあるかも知れない。中国はいま日本に向ける目の方が真剣。安倍総理の訪韓訪中を比較すると明らかに違う。靖国問題だけでこじらせてはいけないという反省もあって変えた。ところが韓国にはそれが見られない。韓国は、日本と中国、ロシアに挟まれており、実はアメリカが一番大事なはず。その方向感覚がずれて来ている。願わくば、これは盧武鉉政権の問題であってほしいと思っている。
●質問 アメリカにネオコンとかリアリスト派という人たちがいて、その中に最大の抑止力は核だと割り切って、日本もドイツも核武装をすべきという一派がいる。それがブッシュ政権をつき動かしていると書いている本がある。それは一部の極端な意見なのか。
○佐藤 そう思うけれど、次の政権を考えてマケインの元にかつてのネオコンみたいな人から中東派、その他いろんな人が集まろうとしている。怖いのは、外へのコミットメントをもっと縮小しようというふうになってくること。日本との関係は二〇一四年に向かって進み出しているので、そういう意味では安定的だと思う。先生方にお願いしたいのは、是非民主党の一部とも付き合ってほしいということ。自民党は米国の民主党と、日本の民主党は共和党とお付き合いされたらよろしい。もう手の切れないパートナーなので、お互い議論しあうことが大事ではないか。
●質問 いま中国のアメリカ議会へのロビー活動は凄い。だからもう完全に、ヒラリー・クリントンも中国寄りになっている。
○佐藤 ということも聞いている。ただ私の友達で民主党のホルブルックという人が、いまアジア・ソサエティのチェアマンをやっている。来年日本で会議をしたいと言っている。なぜだと聞いたら、アジア・ソサエティでは中国とインドの話しか出て来ない。日本は大事だ。もう一回日本の大事さを分からせたいというのが彼の意図。
 日本は中国のような膨大な市場とは違うが、日本なりの良さがある。中国とは全く違う日本。一歩先に進んだ民主主義国家。そういうことを知らせるチャンスが来ているのではないか。そういう意味でも是非、共和・民主両方と付き合っていただきたい。(文責・正しい日本を創る会事務局)