◆対中外交を転換しつつあるアメリカとEU
皆さんとお会いすることが出来てとても嬉しく思っている。今回日本を訪れ、日本の外交政策が変わったことに気が付いた。東アジア全体の情勢も変わってきており、これは非常に大きな重要な変化である。
ご存知のように、反テロ対策の面において、ブッシュ政府は中国政府に非常に多大な信頼を与えた節がある。しかし、私がアメリカの政治家との個人的な交流から得た結論は、彼らはみんな中国政府に騙されたと認識しているということである。中国政府には、国内の人権状況を改善する姿勢が全く見られない。また異なる意見を持っている人々や、法輪功やその他の宗教団体に対しても、一層厳しい取り締まりをするようになった。一方、国際関係においては、中国政府は常にいわゆる「ならず者国家」に対して支援を行いつつ、北朝鮮の核問題も含めて、実際は中国政府が裏でコントロールしていると思われる。
表面的には中国政府は各国との協調関係を演出してはいるが、およそ二年前からアメリカは中国に対する外交政策の調整期に入っている。特にEUの対中武器輸出、金融政策などに関して、アメリカはそれまでの対中宥和的な態度を改めた。北朝鮮の問題を巡っては、アメリカには仕方がないという面もあるが、中国に対しては終始不信感を表明している。アメリカの対中外交政策の変化として目立つのは、親中国的な官僚を更迭したことだ。
また、EU各国も中国に対する外交政策を調整している。特に今年に入ってから、EUでは、対中国政策のイニシアティブをフランスに代わってドイツが取るようになった。ドイツの新首相は中国に対して今までとは違う強硬な立場をとっている。そして、こうした立場はEUの大多数の国からも支持されている。
一方、コリアンの対中外交政策はまだ固まっておらず、アメリカやEUともまだ調整の段階にある。
◆「民主主義」と「日米同盟」が日本の対中政策の基礎
アジアで最も重要なアメリカの同盟国として、日本は対中外交政策について調整すべきである。この対中政策の調整には二つの基礎があると思われる。
一つ目の基礎は民主主義である。中国政府は国内統治において、民主主義勢力を鎮圧するという立場をとっているが、日本は民主主義国家として、中国政府のこのような独裁的な態度を許さない、という立場を取るべきである。
二番目の基礎は日米同盟である。中国政府は対アジア政策の面で非常に不安定要素であり、戦争準備を着々と進め、戦争体系を着々と準備している。また、北朝鮮の核問題も裏でコントロールしている。ご存知の通り、北朝鮮の核は日本とアメリカに向けられており、中国にとって非常に重要な外交カードとなっている。
中国のこうした動向に対して、アメリカと日本は同盟国として、それに相応しい然るべき対策を講じるべきである。さらに、日本は以前とは違う世界の大国として、より多くの責任を取るべきだと思う。
われわれ中国の民主勢力が非常に喜んでいるのは、安倍総理が就任早々、世界とアジアの民主主義国家に対して支援を表明したことである。日本政府はアジア太平洋地域における民主化の動きに対してもっと関心を払うべきである。それはアジア地域の非民主主義国家の民衆が望んでいるだけでなく、EUやアメリカの政治家たちも日本にこのような役割を果たして欲しいと望んでいるものと思われる。
このように中国の民主化を支持することは、実は日本の安全保障にも関わっている。というのも、中国政府が戦争体制を準備していることに対しては、中国国内の民主勢力も海外の民主勢力も連携してみんな断固反対の態度を取っているからだ。われわれが得た情報では、胡錦濤は北朝鮮の核を巡る外交政策について、中国国内でもかなりの反発を受けている。だから、中国の民主化を支持することは即ち、アジアの平和や日本の安全保障、それから世界の平和にも貢献することになるのである。
【質疑応答】
●質問 北朝鮮が崩壊するよりも、中国が崩壊する方が早いのではないかという見方もあるが、こうした見方についてどう思われるか。
○魏 中国の政権が不安定であることは事実であるし、今の意見の通り、北朝鮮も不安定だが、中国はもっと不安定である。実際、今の中国は非常に暴動が多く、それに対して中国政府は制圧のための部隊を招集している。そこまで状況は厳しく、深刻となっている。
一方、北朝鮮は自分を養うための力さえ持ち得ず、中国に養ってもらわざるを得なくなっている。私たちの得た情報では、北朝鮮内部には、金正日に対して反発する勢力や、金正日体制を倒そうとしている勢力が存在する。
中国政府内部でも、もっともっと深刻な状況になっていて、対立する勢力が権力闘争で死に物狂いになっているかもしれない。いずれにしても、二つの政権とも非常に不安定になっているが故に、対外的には、例えば戦争という手段を用いて自国の安定を維持しようとしているわけである。
しかし、この二国は戦争の一部の条件はそろっているが、外部的な条件がそろっていない。例えば強固な日米同盟が彼らの目前に存在している。だから今の中国の外交政策は、いかにアメリカとヨーロッパの同盟関係を破壊することが出来るか、また日米同盟関係をいかに破壊することが出来るか――というところに重点を置いている。
こうした研究を中国軍は何年か前から始めていたが、アメリカでも同様の研究結果が得られている。つまり、もし一旦米国と中国との戦争が起これば、米軍は日本の後方支援が得られなければ戦争を維持することは不可能となる。そして、アメリカがこの戦争に介入しないと分かれば、中国は必ずこの戦争を発動する。それ故、日本の政策決定が非常に重要なカギを握っているのである。私が日頃から日本との協力関係を結びたいと希望する原因の一つも実はそこにある。
●質問 これは思い出したくないことだと思うが、先生は二度に渡って計十八年間も投獄された経験を記しているが、その時の状況についてうかがいたい。
○魏 私が初めて投獄された理由は、?小平が発動しようとした戦争に対して反対を唱えたからである。私が投獄されてから、?小平自ら、「魏京生に対しては一番低い待遇を与えなさい」と指示を出したと聞いている。
その結果、私は人間として扱われないような過酷な状況に置かれた。投獄されたのは、ベッド一つの広さの風の通らない独房であった。長年、太陽を見ることが出来なかったため、その結果、色々な病気にかかった。歯もどんどん抜け落ちた。今皆さんが見ている私の歯は全部入れ歯である。
二回目に投獄された状況はもっと複雑だった。一九九四年当時、アメリカの国務次官が中国を訪問して、私に会う密約を取った。しかし、この密約が中国政府に知られ、政府は直ちに代表を派遣して私と交渉に入った。江沢民は、私にアメリカの国務次官に会わないよう要求する一方で、その見返りとして、中国国内の人権状況を改善すると約束した。例えば労働組合のある程度の緩和や新聞・言論の自由、特にメディアに関しては統制を緩めるといった内容だった。
しかし、江沢民に反対する勢力は、アメリカに対してより強硬な態度を取るために、私を逮捕すると主張した。その結果、私はアメリカも含め色んな勢力に守られながら、同時に常に逮捕の圧力を受けるという状況の中で、十八カ月間を過ごすこととなった。十八カ月経ってから中国政府内部で意見が統一され、私の逮捕につながった。そして、死刑囚を監禁する施設に送られたのが、十三年前だった。
当時の中国の内部では権力闘争が非常に激しかったが、今はそれよりもっと激しくなっている。だから、胡錦濤がいかに大きな圧力の中で政治を司っているかが容易に想像できる。また胡錦濤は、対外的な戦争を発動する条件も有していると思われる。
なお、私が二回目に投獄された時、一応その施設そのものには改善が見られたが、犯人に対する態度や過酷な管理は少しも変わっていなかった。
●質問 日本の安全保障にとって台湾海峡は非常に大きな意味を持つが、中国は現在、台湾海峡に向けて八百二十基を越えるミサイルを並べ、さらに毎年、百二十基ずつ増やしていると言われている。国家分裂法に基く中国の台湾政策は、今の胡錦濤政権の下で実際の戦争に結びつく蓋然性が非常に高いというお話だったと思うが、時期的には、それはいつ頃になるのだろうか。
○魏 十七回党大会と北京オリンピックの間に、胡錦濤政権の安定性をまず見る必要がある。もし安定性が増してきたら、戦争を発動する必要性、緊迫性は減るだろう。しかし、胡錦濤にとっては、戦争を発動する時期が一番重要なことではなくて、戦争を発動するための条件が重要なのである。
大きな条件は三つある。一つ目はロシアの支持だ。実はロシアは非常に大きな支持を現在も中国に与えている。ロシアは暗に、アメリカと中国が衝突することを望んでいる。それによって、ロシアはヨーロッパに対する支配権を取り戻すことが可能となるからだ。それ故、ロシアに対する説得は不可能である。
二番目の大きな条件はNATOである。中国にとっては、NATOとアメリカの意見の分裂が非常に重要である。なぜなら、それによって、戦争が世界大戦ではなくて、東アジア地域に限定されることになるからだ。これに関して私たちは、海外でずっとそうした条件が出来ないように阻止活動をやってきた。
第三の大きな条件は日米同盟を分裂させることである。北の核問題の本質に即して言えば、北に核を持たせて、日本を脅す。そうすると、一つの望ましい結果として、日本はこの戦争体制から出て行き、中国にとってはやりやすくなる。
だから、北朝鮮の核問題と中国の民主化問題が根本で、この大きな情勢を動かす重要な要素なのである。それに対して、私たちは内部と外部の両方から、中国が戦争を発動出来ないように、阻止するための条件を作って行くべきである。
●質問 北朝鮮は完全に中国の言いなりだということだが、朝鮮半島は長期間、中国に押さえつけられてきた関係で、心底そう思っているわけではないとの見方もある。実際のところ、中国は北朝鮮に対して、実質的な政策決定と感情の面でどれぐらい影響力を持っているのかをお聞きしたい。また、中国は北朝鮮に核を持たせて、日本を恫喝するとの話であったが、余り恫喝し過ぎると、日本は今までの政策を確実に転換せざるを得なくなる。中国は、本当に日本を脅せばなんとかなると考えているのだろうか。
○魏 まず二番目の質問についてだが、中国の外交政策の設計は、私も非常に愚かで間違っていると思うが、しかしこれが実際に設計されている外交政策そのものなのである。なぜかと言うと、伝統的に日本は対外的に非常に温和的な態度を取ってきたため、たまたまある首相の時に態度が強硬になっても、しばらく経って新しい首相になれば、日本は再び温和的になって行くだろうと中国は楽観的にみている節があるからである。だから、皆さんも注目していると思うが、安倍総理が就任した途端、中国政府は積極的な外交政策に打って出たのである。
最初の質問については、中国は北朝鮮の核に関しては、十分コントロールする能力を持っており、北の核は中国が密かに提供したものではないかという説さえある。また北朝鮮は、食料やエネルギーなどの輸入は全部中国に依存せざるを得ない。
いずれにしても、日本がアメリカとの同盟をより強固な関係にしておくことが、中国の戦争発動に対して非常に積極的な阻止効果をもたらすと考えられる。なぜかと言うと、日本がより強硬な態度に出ることにより、中国国内の戦争反対派をもっと利用できるからである。
われわれが非常に心配しているのは、安倍総理が中国政府に誤解を与えることである。どういう誤解かと言うと、中国政府が、安倍総理を大いにあてに出来ると思うことである。逆に、私が強く希望しているのは、安倍総理が、日中友好という大きな課題に対して好意を示すと同時に、中国国内の反対勢力や民主勢力にも好意を示すことである。それによって安倍総理は、日本の安全保障や外交政策が、一面的な態度ではないことを中国に示すことが出来る。ともあれ、中国には明確なシグナルを送ることが必要である。多くの戦争は誤解したままの状況の中で起きてしまうからである。
●質問 自民党の中川昭一政調会長が、北朝鮮の核問題を契機に、核について日本人もしっかり議論すべきではないかという趣旨のことを述べ、これに関して自民党内でも賛否両論が起こった。しかし、先生の話を聞くと、こうした議論は中国との関係でも積極的な効果をもたらすのではないかと思われるが、どうだろうか。
○魏 核兵器に関する私個人の立場を述べると、全ての核兵器そのものに反対である。二番目に、日本が核兵器を持つか持たないかについては、日本人自身が判断すべき問題であると考えている。というのは、日本は非常に核の脅威にさらされている状況にあるからだ。だから、日本がもし核兵器を持つとしても、私は反対はしない。一方、日本が核を持たなければ、私はそれを歓迎する。
三番目に外交の問題が絡んでくる。核の脅威を受けている国家であるならば、全世界の同情を得られるが、もし核を製造し、持つという宣言をすれば、世界の大多数の国々から反発を受けるだろう。つまり、純粋に外交の立場、政策の立場から見ると、核を作ると宣言したら不利な状態になると思われる。
●質問 誤解されると困るが、われわれは核保有論者ではない。あくまでも絶対に核を持つべきはないということを前提にした上で、しかし現実に核の脅威に脅かされている中で、核について国民が自由に発言してもいいのではないか、という話に過ぎない。
○魏 そうした議論を中国政府はおそらくほとんど重視しないと考える。なぜかと言うと、中国政府は今の日本の状況を熟知しており、日本が核を作るかどうかということをほとんど想定してないからである。
これは私の個人的な見解だが、中国政府はおそらく日本でこういった議論が活発化することを期待しているのではないだろうか。なぜかと言うと、核を持つか持たないかという議論が活発になると、外交的に中国政府は有利な立場に立てるからだ。先にも述べたが、純粋に外交の立場から考えると、こうした議論が表面化してくると、日本の外交にとっては不利益が多くもたらされると思われる。
●質問 中国各地に暴動が起こっているという話があるが、中国の民主化運動が本当に大きなうねりとなり、民主主義体制に変えるほどの力を持ち得るのだろうか。そもそも中国には十三億もの民がおり、しかも今まで中国は議会制民主主義を一度も経験したことがない。そういう国で、本当に民主革命が可能なのだろうか。
○魏 私は、今質問された形での民主革命の可能性は非常に大きいと思っている。特にここ数年、その可能性はそれ以前の倍のスピードで大きくなっていると思っている。そして、そこには少なくとも二つの条件が存在する。
一つ目は、中国の少なくとも九十%以上の人々は、中国には民主的な政党が必要だと感じるようになっていることだ。だから、この政権が一旦変動すれば、必ずと言っていいほど民主的なコーポレートへ向かって行くと思われる。
二番目の大きな条件は中国の政権闘争である。これが、今や死活問題になっている。そこから、民主化の方に動きが回っていく可能性が十分ある。中国の長い歴史の中で見られたように、統治集団の分裂は、大抵新しい革命的な変動につながると言える。中国国内では多くの有識者が、今後三〜五年の間に大きな混乱が起きるだろうと見ている。当然、私は何の保証も出来ないが……。(文責・正しい日本を創る会事務局)