◆アジアにおけるエネルギーの消費展望と問題点

 本日はアジアのエネルギーについて、現状と今後の流れを中心に説明し、私達が直面している課題とそれらを解決して行く私なりの考えをご提案申し上げたい。
 日中韓台湾を含めた北東アジアは、アメリカ、ヨーロッパと並んで世界の三大エネルギー市場の一つである。二〇〇五年のエネルギー消費はすでにアメリカを凌いでおり、中でも中国が非常に大きい。二〇〇〇年から二〇〇五年にかけて世界全体が一一四%しか伸びてない時に、中国は一六〇%伸びている。日本はほぼ横這いか、減少。しかしながら日本の経済は、これら北東アジアの経済との一体化が進んでおり、中国だけの話と言っていられない。よしんばそうだとしても、すぐお隣にすごい勢いでエネルギーが流れていくとすれば、日本としてはただでは済まないというのが実状である。
 北東アジアのエネルギー自給を見ると、中国は世界で最大の石炭生産国であり中国のエネルギーの七割を支えている。それに比べて、日本、韓国は国内にエネルギー資源がない。石炭も石油も天然ガスもすべて輸入している。平均すると、石油で言えば日中韓の三ヶ国で七五%、四分の三を輸入している(中国も最近は石油の輸入国になっている)。ガスも約七割を輸入。石炭は日本、韓国が輸入、中国はまだ輸出国なので三ヶ国全体で見れば輸入の比率はわずかという状態になる。
 その中身をエネルギー原単位で見てみると、一人当たりのエネルギー消費はアメリカが圧倒的に高い。伸び率で大きいのは中国、ただ一人当たりの消費はそれほど大きくない。その間に日本と韓国が位置している。韓国は九〇年代に非常に大きく伸びている。
 一方で、ソ連と中国は、GDP当たりのエネルギー消費が非常に高い。それに比べて日本は、世界で最も省エネルギーの進んだ国で、百万ドル当たりの消費量を石油換算で見ると百トンを割っている。中国は八百トン。これはGDPのとり方もあり、日本の産業のエネルギー効率を例えば百とすると百五十ぐらいになる。
 それから石油で一番問題なのは、輸入が中東に極めて大きく偏っているということである。日本の場合は既に九〇%依存している。韓国は八〇%。中国はまだ五割を切っている。中国はそれを中東ばかりに依存すると不安なので五割以下に抑えると言っているが、実はそうではない。中国の原油は低硫黄で非常に良質、それを前提にして製油所を作ってきた。ところが中東のような硫黄分の高い原油は、中国の製油所ではまだ扱えない。実際に扱える製油所は三割ぐらいしかないと言われている。今中国の石油は国産が六割、輸入が四割。輸入の内の半分ぐらいしか中東原油を入れられない。それで硫黄分が少なくて軽いアフリカ原油を買い漁っている。
 同じことがアメリカでも起こっている。アメリカの石油会社はその製油所の設備に投資してこなかった。そのために軽くてガソリンの作りやすいアフリカ原油を買い漁っている。この三年ぐらい石油価格が非常に高騰した。それはアメリカと中国がアフリカの良質の原油を買い漁ったことが原因だと私個人は考えている。しかし、アフリカ原油がそうたくさんあるわけではないので、いずれ中国も中東原油を増やさざるを得ない。そのための投資もこれから進めるようである。
 そういうことの結果、何が起こっているか。その一つがアジアプレミアム。中東原油がヨーロッパ、アメリカ向けとアジア向けの場合では、一バレルあたり一ドルぐらいアジア向けが高い。我々アジアから見て一番近いのは中東、そこに買いに行かざるを得ない。そこで足元を見られている。十年ぐらいの平均でもやはり高い。
 もう一つ問題なのが、軽重格差の拡大。石油需要は自動車燃料を中心に増加、そのため重質の原油を精製してガソリンあるいはディーゼルの様な軽い油を作る装置を金をかけて作らなければいけない。アラビアン・エクストラライトという軽質と、アラビアン・ヘビーという重質を精製する技術的な格差は二ドルから三ドル、しかし軽いものが不足しているために八ドルとか十ドルという格差になっている。このアジアプレミアムと軽質重質格差の二つが石油の中で今非常に大きな問題になっている。

◆エネルギー価格の展望と節約技術、そして再生エネルギー

 私どもの研究所でこの秋、二〇三〇年までの見通しを作ってみた。
 まずGDP、先進国OECD諸国は二・四%ぐらいの伸びであろう。それに対して発展途上国の伸びは四・八%、特にアジアの発展途上国は五%を超え、これからも世界の経済成長を引っ張って行く原動力になるであろう。
 それから一次エネルギー価格の展望は、一時期七十ドルまで行ったが五十ドルぐらいまで一旦落ちるのではないか。そして二〇一〇年頃からじわじわと上がると考えられる。天然ガスも世界的に需要が増え、価格は上がる方向にあると見ている。特にアメリカがLNGの形での輸入をこれから大量に増やそうとしている。二〇三〇年には原油が五十七、名目価格で言えば大体百ドルぐらいになるという計算をしている。IEA国際エネルギー機関が最近の見通しを発表したが大体このぐらいに置いている。
 それから石炭は今でも他のガスや油に比べて安いけれども、今後も比較的安い値段のままで推移するであろう。中国は国内で大量に使っても国内で生産出来る。日本や韓国は、輸入先であるオーストラリアの政治は安定、今大変な勢いで出荷設備、あるいは山の開発をやっており石炭の不足が起こるということはまずないと思われている。
 そういう前提で長期の予測をしてみると、二〇三〇年までに大体世界では五割ぐらい伸びるであろう。それに対してアジアのエネルギー消費は倍増するであろうと読んでいる。ただその間に省エネルギーの技術も進歩するので、一五%ぐらいエネルギーの消費が減らせるのではないか。
 いま石油は世界で八千二百万B/Dぐらい消費されている。二〇三〇年では一億B/Dぐらいの消費になる。その十五%は千五百万B/D。いま世界最大の産油国であるサウジの生産量が一千万、頑張ればサウジ一国分以上の節約は出来ることになる。
 では、節約でどんなことが考えられているのか。これから三十年から五十年ぐらいはやはり輸送用は液体燃料で石油が中心になる。そうは言いながら石油が足らないので熱と電気を使う部分は極力石油以外でやることになる。この辺の技術の進歩は結構日本が進んでいる。例えばエアコン。その効率は、一九九〇年頃で、モーターで使った熱量と、そこで冷やせる熱量はだいたい一対一。それが二〇〇五年時点では一対四、それを日本の電機メーカーは二〇〇八年までに一対八、二〇一二年では一対十二を目標にすると言っている。一対四が一対八になることだって大変なことである。
 それから中国もやはり大分エネルギーには参っているようで、今年に入り省エネに非常に熱心に取り組むようになった。車では、トヨタが先陣を切って省エネのハイブリッド車をつくった。電気で走る比率は二割か三割。これを中国の自動車メーカーは将来的に五割ぐらいまで持って行きたいと発表している。
 国別にエネルギー需要の状況を見ると、何と言ってもこれから先は人口の多い中国とインドで相当にエネルギーの消費が伸びていき、韓国、日本は比較的小さいものになってくるだろう。
 それからエネルギー別。いろいろと新エネルギーの開発と言われているが、やはり石炭、石油、天然ガスという化石燃料が中心を成していく。原子力は、日本、中国、韓国の三ヶ国と台湾が今後とも相当に力を入れざるを得ない状況にある。中でも中国は、核技術に軍用分野があり、二〇〇三年頃まであまり言わなかった。ところが二〇〇四年、二〇〇五年に大変な電力不足が起き、原発を大増設するということを一生懸命言い始めた。
 それからアジアで原発を言い出している国は、インドネシアとベトナム。ただ技術のレベル、それから安全保障という問題もあり、どう原発を普及させて行くのか。これは原発先進国である我が国が模範的な例を示しながら話し合いをして進めて行かなければいけない。やはり核拡散は非常に政治的にも重要な問題はある。
 それから最近流行の再生可能エネルギー。これは数量的には大分上がってくると思うが、トータルで見ればまだまだ二、三%に留まる。ただ太陽光発電の技術はかなり進歩して効率が良くなってきた。

◆アジアの石油、天然ガス、石炭の需要と供給

 アジアの石油需要として、日本は横這いかやや減る。韓国も大体横這いくらいではないか。中国とインド、それから東南アジアがやはり結構伸びていく状況である。
 天然ガスは、日本と韓国で発電用等に使っている燃料の内、CO2の排出量の少ない天然ガスの需要が今後も伸びて行くのではないか。中国や東南アジアの諸国でも相当今後伸びていくだろうと思われる。
 東南アジア諸国では国内に天然ガスがあり、インドネシア、マレーシア、ブルネイという所は日本への輸出国。しかし、この一、二年、インドネシアからのLNGの輸出にやや問題が出てきている。結果だけ言うと、インドネシアとマレーシアという国には国土面積でインドネシアは六倍大きい。石油の生産量はインドネシアがマレーシアの倍くらい。天然ガスの生産量はインドネシアの七掛けぐらいがマレーシア。石油と天然ガスというのは、掘れば掘った分だけ無くなるので片方で探す努力をしなければいけない。現在インドネシアとマレーシアの石油と天然ガスの可採埋蔵量は同じ。つまり国土面積が六倍あるのに、マレーシアと同じだけしか石油と天然ガスを見つけていない。この十年間そういう努力をあまりしてこなかった。かつてアメリカ系の外資が入ってインドネシアの石油天然ガスを牛耳っていた時代があった。その反発というのがあったと思う。しかし、今年になり、ユドヨノ大統領始めようやく石油と天然ガスをもっとやらないといけないという雰囲気が出て来た。実はインドネシアは二〇〇四年から石油の純輸入国になっている。
 それからアジアの石炭需要。これは現在でも中国が圧倒的にたくさん使っており、今後も中国とインドでの消費が伸びるであろう。ただ中国はいま極めて熱効率の悪い使い方をしているけれども今後相当効率改善が進むと予測している。端的に発電所の熱効率で言うと、日本は四〇%。これに対して中国は、平均を取ると三三%。インドはもっと悪くて平均二八%。幸いなことはインドにしても中国にしても、まだこれから発展途上国で需要が伸びる。そのために熱効率のいい新しい発電所を作って行かなければいけない。中国では今年ぐらいからかなり本気になって、行政指導ベースで効率の悪い発電所の閉鎖を中央からの指導で出し始めた。
 それから全体としてアジアの最終エネルギー消費がどのようになるだろうか。部門で言えば、産業用よりは民生用農業部門、あるいは輸送用の部門、自動車が増えるだろう。
 エネルギーの種類別で行くと、ガスと熱の供給が増えるであろう。熱は中国では暖房用になり、東南アジアでは冷房用ということになる。

◆モータリゼーションの進展と燃料(石油)消費

 モータリゼーションの進展。やはりお金が出来ると車に乗りたがる。それは先進国も後進国も同じ。自動車の保有台数を千人当たりで見るとアメリカが圧倒的に高く、日本とかOECD諸国は増えていく。最近とみに増えたのは韓国、もう六割まで増えている。そして中国、インドが続くがまだまだ普及率から言えば大したことはない。ただし人口が多いので、これからすごい勢いで車の台数が増えていくだろう。いま中国全部ひっくるめて二千七百万台と言われており、この内自家用車が六百万台ぐらい。いまのトレンドだけで伸ばすと二〇二〇年で六千万台、二〇三〇年で一億五千万台になる。非常に大きな問題である。
 そういうことの結果、アジアの石油需給はどんどん増えていく。かつて中国とインドネシアがアジアでの二大石油生産国であったが、中国は今でも世界で第六位であるが頭打ち。インドネシアはもうかなり生産が減ってきて二つの国とも輸入国になってしまった。
 中国の大慶原油や勝利油田は一九七〇年代に生産が始まり、もう三十年以上生産続けてきた。大慶の場合は、今はポンプを二万台以上置いて水を押し込んで油を押し出してポンプで汲み上げる。最初の元気のいいときは穴さえ開ければ自噴して出てくるけれども、今は本当にもう末期的な状況にまで来ている。その大慶で中国全体の三分の一を生産している。ただ大慶の原油の回収率は多分三十%強ぐらい。今後色々な技術でお金を掛けて行けば七割の生産が増やせる部分も出てくる。原油価格が上がったために、原油を生産するいろんな投資が出来るようになった。
 それ以外の所でも、中国は油田を見つけてはいる。それで年間二億トンぐらいの生産で横這いというのが大体今の見方。それに比べて需要はどんどん伸びていく。この差額分、輸入せざるを得ない。大体二〇一〇年から二〇一五年に中国は日本の石油輸入量を抜く。
 石油の輸入量で言えば、今アメリカが世界第一位。日本は世界第二位。大体五〇〇万ドル輸入している。中国は今後の需要の伸びから言えば二〇一〇年頃には純輸入量で日本を上回るだろう。今の日本と同じぐらいの輸入国がもう一つアジアに出来ることになる。

◆中東依存における量の確保と安全の確保

 それから量の確保も大変だけれども、安全保障という問題がある。チョークポイント、要するにほとんど狭い所をタンカーで運んでいる。世界的にはアラビア湾を出るとまずホルムズ海峡という狭い海峡がある。それから東に向かってくればマラッカ海峡。
 例えば、原油を三十万トンの船で運んだとして、現在アジアが輸入している量を割ると、マラッカ海峡を年四千二百隻船が通ることになる。実際にはもっと小さい船もあるので五割り増しぐらいになるだろう。需要が増えて二〇三〇年に倍になれば年八千三百隻になってしまう。量を確保するために今の輸入ソ−スとして中東に行かざるを得ない。その中東から我々が期待するだけの油が出てくるかどうか。それを安全に運べるかどうか。その二つの大きな問題を抱えている。
 そこで中東依存度が、二〇三〇年でどのぐらいになるか計算をしてみた。中国は五割を超えて七五%ぐらい。日本も韓国も高い比率が下がることはなく、更にじわじわと上がることになる。では中東依存を減らす対策として何があるだろうか。それは結局中東以外の所から油を持ってくるしかない。いま我々に考えられるのはロシアの原油、それからカナダのオイルサンド、これを最大限輸入すると北東アジアの中東依存度は基本ケースに較べそれぞれ六割台に引き下げることが可能となる。

◆顔の見えるエネルギーの自主開発

 以上、我々の直面している課題を整理してみる。今年の五月三十一日、新国家エネルギー戦略が経済財政諮問会議で審議了承された。その中で、二〇三〇年に向けての数値目標が具体的に出された。
 一番目は省エネルギー計画(現在より三〇%以上、エネルギーの消費効率を改善)。
 二番目は石油依存度の引き下げ(石油依存度を四〇%以下にする)。
 三番目は運輸エネルギーの次世代化計画(石油依存度を八〇%程度にする)。
 四番目は原子力立国計画(原子力の比率を現在の約三〇%から四〇%に上げて行く)。
 五番目は総合資源確保戦略(自主開発比率を四〇%に持っていく)。
 五番目の四〇%は物理的に不可能な数字である。産油国に我々が油田を見つけて生産した場合、もらえるのはせいぜい二割ぐらい。それから中東のような産油国は元々入れてくれない。だから大きな油田を我々の自主開発でやるのは極めて難しい。
 いま日本は五百万B/D生産して消費している。まず海外で五百万バレルに相当するだけの油田を我がものにして、それで取り分で四割貰うと四割という比率が実現できる。ただこれは夢のような話。ただ、長い間石油開発をやってきた者として、海外で開発した油田を我がものにするということよりも、産油国の人達と上から下まで知り合いになる、お互いに腹を割って話し合いが出来る関係を作ることが大事である。
 一番避けなければいけないのは「日本人に油を売るな」ということは絶対起こらないようにしなければならない。そのために私は、石油開発のオペレーターをやるべきだと考えている。オペレーターとは自分が出て行って自分で掘るということ。やはり現場に行って、その国の人達と現場で一緒に苦労をしながら、一緒に見つけたねと肩を叩き合う。これがやはりエネルギー外交の一番基礎になる所ではないかと思う。そういう意味での自主開発を進めて行くということが、エネルギーの安全保障に繋がって行くのではないか。

◆国際共同石油備蓄基地建設と持続可能な発展を求めて

 それからロシア。ロシアから東向けに供給されているパイプラインの実状を見ると、実はバイカル湖より東にはパイプラインが全然無い。あるのは計画。今年の四月、ナホトカまでのパイプラインの第一期工事が着工した。第二期工事はまだ決まっていない。
 それからサハリンから油と天然ガスを持ってくる話。油はもう一部出荷が始まっている。天然ガスは今年の夏からいろいろと官僚問題等でごたついている。ロシアという国はなかなか一筋縄ではいかない。二〇〇三年以来パイプラインを巡って日本と中国が色々いがみ合って来た。そこの所をロシアに隙を突かれたのではないか。
 今年の三月、ガスプロム(ロシアのガスを担当する国有ガス会社)が、北東アジア向けにガスを供給するという提案があった。バイカル湖のすぐの北の所にコビクタという大きなガス田がある。中国も韓国も日本もこれをシベリアのガスとして狙っていた。実はこれはイギリスのBPが押さえておりガスプロムの自由にならない。それでヤマール半島という北極海に面したガス田地帯からパイプを二千五百キロ引いてそれを売ろうという。
 これはおそらくそのプーチン政権の中にもいろんな政局争いがあって、その弾みから出てきた話ではないかと思う。やはり買う方の立場の日本、韓国、中国この辺の国々が、心を一つにしてロシアと取り組まないと、なかなか難しいという状況にある。
 そこで、とんでもない発想かも知れないが、ナホトカに備蓄基地を作ったらどうかというのが私の考えである。それを日本も韓国も中国も一緒になって作る。シベリアのパイプラインは四千八百キロある。シベリアの山の中、高い所は標高二千メーターぐらいあり、冬は凍るような所。事故が起こった時にすぐ現場に行くのが難しい。やはり港に一ヶ月分ぐらいの備蓄を持っておくのとおかないのとでは安心感が違う。例えば、日本と中国が沖縄に共同備蓄を作るとなると、もう議論になり得ないと思うけど、シベリアに備蓄基地を作るのであれば、それはお互いにメリットもあるしロシアも乗ってくるかもしれない。原油のマーケットを作ることもできる。
 いま中東原油はやたら日本向けに高く売られている。他にもこういう原油があるぞと、こういう値段があるよということを示すためにも面白いのではないかと思っている。
 最後、持続可能な発展ということで、やはり北東アジアは非常に大きな人口を抱えており、世界最大のエネルギー市場となる。エネルギーと環境問題は非常に大規模になり、一国だけでなかなか片づかないので、国際協力が必要であろう。そのためのグランドデザインを国際的な目で書いていく必要がある。
 エネルギーの合理化、供給には緊急時の体制を作る。それから供給プロジェクトそのものを作る。長期的には北東アジアのエネルギー機構のようなものが作られていけばいい。ただ最初に機構ありきで議論し出すと、枠組みの話だけで中身は何も進まない。備蓄基地のような案件で、具体的なプロジェクトを二ヶ国もしくは三ヶ国で手がけて少しずつ大きな組織にしていく。その方が現実的なのではないかと思っている。

質疑応答

●質問 石油の採れる可能性のある年限は?
兼清 個人的には百年は大丈夫と思う。現在の確認可採残存年数というのは石油で四十・六年、天然ガスで六十年。ただ埋蔵量というのは確認可採埋蔵量ということで定義が非常に厳しい。油田を見つけ実際に井戸を掘り確認し、それに技術的に何%採れるかという係数を掛けている。だから普通は推定埋蔵量というもうちょっと大きい数量で考える。確認埋蔵量は実際よりも二、三割は少ないと思う。
●質問 百年は大丈夫と。
兼清 はい。これから見つかるものもある。それに油田の回収率はせいぜい三〇%ぐらいと考えている。しかしお金を掛ければ四〇%とか五〇%に上げていくことが出来る。それから、まだ見つかっていないのは水深が例えば千メーターを超えるような所、最近は掘り始めたけれども、そういうものも出て来る。最近のアメリカあるいは直近のIEAの数字では、七十年から百年ぐらいという数字が言われ始めている。
●質問 それまでの間に代わるエネルギーは恐らく見つかるだろうと。
兼清 いや、見つけて行かないといけないということ。やはり最終的には再生可能なエネルギーと原子力に持って行かざるを得ないだろう。それにやはり省エネルギー、エネルギー効率を良くする。車が一番の問題、ハイブリッドの様な形に熱効率を良くする。それから建築物の熱効率を良くする。いずれにしてもエネルギー需要は増えていく。ただし、先程の話は自動車用燃料としては石油に限った場合で、石炭の場合はまだ何百年分かある。
●質問 何百年ですか?
兼清 二百五十年とかそういう数字。
●質問 今の技術で行くと、石炭も排出するCO2なども抑えながら使える?
兼清 それをやろうとしている。
●質問 まだ出来ていない。
兼清 出来ないことは無い。ただ非常に高いお金が掛かる。発電所の中で出てきたガスをCO2だけ分離して、地下のガス田、油田で昔採り尽くしたような所に入れてやる。しかしこれは簡単ではない。例えば地下千メートルの所にある油田があったとする。百気圧かけなければならない。
●質問 またそれでエネルギーかかる。
兼清 だから、その効率は決していいものではない。今のところはまだ経済的かどうかは非常に大きな問題である。
●質問 IHI(石川島播磨重工業)はそれを実験的にやって成功したとかいう話があるが。
兼清 はい。長岡辺りで石油資源開発と東北石油が掘った後のガス田を使い、炭酸ガスを押し込む実験をこれまでもしてきている。いま世界的にその炭酸ガスを地下に入れることで、商業化出来ているのは実は油の会社である。
 油田は採り尽くしたとしてもまだ六割ぐらい原油が残っている。油田は地下に大きな隙間があって油があるわけではない。十ミクロンとか二十ミクロンの石の隙間の中に染みこんでいる。そこに炭酸ガスを放り込んでやると油と混じり霧状になって出てくる。これを炭酸ガス工法、炭酸ガスミシブル工法と言う。アメリカではかなり商業的に始められている。日本では、まだそこまで行かない。だから少し時間が掛かると思う。
●質問 あとウランの年数は七十年ぐらいとか、そんなものしか無いのか?
兼清 ウランは詳しくないけれども、どういうふうに考えるかである。ウランに関する情報というのは石油やガスと比べて極めて軍事機密的なことになる。中国とかモンゴルとかロシアの辺りは資源量がよく分からない。比較的知られているのは、オーストラリア、カナダ、それからアフリカの一部の地域。先程申し上げたように確認埋蔵量というのは非常に厳密な数字。調査をしていない所は確認埋蔵量に当然入らない。ウランについての資源量というのは油などに比べるとまだまだ曖昧なところはあると思う。(文責・正しい日本を創る会事務局)