◆差別と区別、努力した人が報われる社会に

 私は、普通の主婦になりたいと思っていたが、どう間違えたのか結婚して一年しないうちに離婚し、専業主婦というのは一番リスクの高い職業ということを身にしみて感じた。それからずっと働いていて、ハーバード・ビジネススクールで女性としては二番目にMBAを取得。その後、モルガンスタンレーを経て、独立しベンチャーを始めた。
 ベンチャーはまだ日本のなかで非常に差別されている。華々しい六本木ヒルズ族も出てきたけれども、日本の九九%は中小企業、零細企業、いわゆるベンチャーに毛が生えたようなもの。その悲哀の話をいくつかしたい。
 最初に起業家に対する社会的評価はどんなものか、各国の調査がある。「新しい事業や会社を始めることは立派なこととして認められているか」という問いに対し、認められているとしたのは、アメリカ九一%、カナダ八八%、フランス八三%、ドイツ七三%、イギリス三八%。さて、日本は何%かというと八%でしかない。ベンチャーというと、何となくかっこいいという印象はあるが、「リスクの高いことはおやめなさい」というのが日本人、まともな人間ではないというような目でいつも見られている。名刺交換をしてもなかなか相手にされない。日本では、起業家は祝福されないし、まだまだ差別されている。
 起業家を阻むものとして、法規制、行政の無理解がある。日本の場合、これが一番大きいように思う。アメリカの場合、MBAを取ると評価が非常に高くなる。直近の卒業生の初任給は普通で千六百五十八万円。ボーナスを入れれば大体普通の人は二千万円ぐらいの年収が取れる。これは二十七、八歳才の若い人。さらにMBAを取って十年経つと、平均でだいたい一億円。差別、差別ということで敏感になっているアメリカで、なぜ給料が学歴によってこんなに違うのか。ある時気がついたのは、本人がいくら努力しても変えられないもの、例えば、男女、人種、宗教、身体的な障害、これを差別するのは悪、つまり機会は平等に与えなくてはいけないということが徹底している。そこが日本と大きく違うところで、区別するのはいい。つまり、努力した人はその結果として報われるべきである。ところが日本の場合は、結果の平等がよいとされる。法規制も大体そちらの方に向かっている。それはむしろ悪平等ではないか。
 例えば、トヨタと日産の役員報酬を較べてみると、二〇〇三年三月期でトヨタは単純平均で二千百十七万円。外資系の日産は一億を越える。世界の企業としていい人材を取ろうとして競うとなると、やはり日本も報酬において世界的なレベルにならなくてはいけないのではないか。
 ウォール・ストリートにあるゴールドマンサックスは、昨年のボーナスが社員平均七千四百四十万円。方や日本の大手企業二百八十八社の冬の平均ボーナスが約八十八万円。この差は一体どこからくるのか。差別と区別という意味では、差別ではなくて区別であろう。
 投資銀行のトップの年収、CE0がどれくらいの年収を取っているか。ゴールドマンでは六十五億円、モルガンスタンレーが四十九億二千万円。メリルリンチが五十七億六千万円。ベアスターンズが三十九億六千万円。桁が一つ二つどころではなく違っている。こういうような高給を取る人たちがいるという社会だからこそ、エンジェル税制というのがうまく機能していると思う。

◆ベンチャーを育てる意志がない

 これは少し古い話だが、まだ経済産業省が通商産業省と言っていた頃、「新事業創出促進法、夢に向かって驀進」という立派なパンフレットをつくった。新事業創出促進法とは、ベンチャーを育成するための促進法である。私共の会社は二〇〇〇年に起業し、この新事業創出にぴったりだと思い申請することにした。そして通算省に行ったら窓口の対応がおかしい。銀行の方に聞いたら、「通産省に直接行くのはよろしくない。まず窓口で原稿をチェックして頂いてOKが出たところで初めて通産省に行きなさい」と言われた。
 その銀行の方の手助けもあり、立派に書類を作り、私共の会社は新事業創出にぴったりですと言おうと思って関東通産がある大宮のオフィスに行った。すると担当官から「あなたは何もわかってない」と言われた。認定基準のA、B、Cをきちんと読んでいるかという。
 Aとは、成長指向性のこと。概ね五年以内に株式上場、店頭公開を目標とし、その為に具体的かつ確実な計画を有していること。私共も最初からIPOを目指しており、資本計画・戦略も立てているというと、監査法人がすでに監査を始めていて主監事証券会社が決まっていること。つまりIPOが来年再来年というように確実になっていることが条件。当然、私共はこの段階ではずれ。
 認定基準Bは、事業の新規性、これは新しいと認められる商品の生産、またはサービスを提供する事業ということ。これは新技術を利用して今まであるサービスを利用してサービスを改善する事業であっても構わない。とにかく、新規性があること。
 私共のJBOND証券は、日本国債の売買、これをシステムを通じて行うことを始めている。日本国債というのは世界に誇る世界一の残高でありながら大変に流動性が低い。外国人からあまり好まれていない。なぜかというと、透明性が低い、値段がどれくらいなのかよくわからない。これを改善するには、売値がこれ、買値がこれとぱっとわかるシステムがあればいい。透明性も、流動性も高まる。そういうシステムを作った。
 今、九五%以上は従来のやり方でやっている。営業マンは、職人芸的な感覚で売買をしている。これでは間違いが起こったりする。それを防ぐために金融庁の方は必ず「三社以上に値段を聞いて一番安いところで買いなさい。高いところで売りなさい」という指導をする。それが当然ではないからそうする。しかも当然安いところで買ったという証拠を見せなくてはいけない。私共のようなシステムを使えば、システムで履歴が残るので非常に便利である。透明性も高まり日本の国債の流動性も高まる。日本のためにも運用担当者のためにも、すばらしいシステムだと思っている。ところが、通産省のお役人は「今電話でやっていることをインターネットに変えるのは新しいとは認められない」という。それで片づけられてしまった。
 最後に認定基準C。事業の確実性。事業の実施方法や必要な資金の額調達方法が事業を確実に実施するために適切であると認められること。これはビジネスを始める以上、これは儲かる、成長できるというふうに信じて戦略を立て、それなりの資金調達をしている。当然私共も事業の確実性はあると思っていた。これも大きくはずれた。「ビジネスを始める前に契約をいくつか取って置いて売り上げが何億か確実に入るという見込みが立った上で初めて確実である」と言われた。
 要するに、新事業創出促進というが、その精神がどこにもない。頑張ろうというベンチャーの育成には全く役に立たない。現実から遊離した法規制になっている。

◆エンジェル税制、法規制は誰のため

 今度はエンジェル税制についてだが、アメリカと日本では名前は同じでも中身がまるで違う。アメリカでは努力をして成果を上げた人には大変な報酬を与える。その資産を持った人、多少のお金が出来た人がエンジェルとなってベンチャーに、仕事に失敗した人が再び敗者復活戦を戦うために、これから頑張ろうという人たちを応援するためにお金を出す。アメリカではそれが損金に算入できる。これはお金持ちにとって大変ありがたい。上手くいけばまた資産が増えるし、失敗しても税金のところでメリットがある。それがベンチャーを育て輩出する大きな促進力になっている。
 ところが、日本の場合は色々な制限がついている。試験研究費等というのがくせ者。売上高の三%以上あることが条件にある。私共は試験研究費に当てはまるものがなく、エンジェル税制の対象にはならない。
 さらに、売上高成長率が二五%以上であること。二五%以上ということは急成長する大変立派なベンチャー、そこに投資する人はキャピタルゲインでさらにメリットを与えられ、本来のベンチャー育成とは違う。しかも、その半分は課税しない。これこそ金持ち優遇策。ということで日本のエンジェル税制は応用できる範囲が非常に狭い。
 それから、ビジネスモデル特許。私共もビジネスモデル特許を取ろうと、なけなしの金をはたいて二〇〇〇年七月に申請した。ところが六年半経った今も何の音沙汰もない。ビジネスモデルは技術ではなくアイディア、即効性がないと意味がない。弁護士に聞いたら審査する人がすごく少ないのでなかなか追いつかないのだという。そんな状態で制度があるというのはいかがなものか。
 また、子供が幼稚園に行くようになって自分も働きたいと思うとき、まず壁となるのが保育園。子供が保育園に入ってないと就職の時には非常に不利。しかし、保育園に入るには仕事をしている証明がいる。つまり、就職をしていないと保育園に入れないし、保育園に入れないと就職ができないという矛盾がある。これで困っているお母さんが沢山いる。それで私は、「この人は私共の会社で雇う予定でいます」という書類を作ってあげる。そうでもしないと、働く意欲のある女性が働くことが出来ないのが現実だ。

◆ベンチャーを拒むもの社会的差別、規制、横並び主義、既得権益

 私どもJBONDのビジネスは、日本国債の電子取引システムを運営している。機関投資家と証券会社の売買のお手伝いである。取引をシステムで行えば、電話と違い履歴がきちんと残り、一斉にいくつもの証券会社に値段を聞きにいくことができる。マーケットに対するインパクトが押さえられる。電話ではできない芸当で、システムだからこそできる。
 でも、まだ余り普及していない。何故か、それはJBONDを阻むものがあるからである。それは業者(社会的差別)、規制、横並び主義、既得権益を守ろうとする勢力。
 業者とは、私共のようなサービスを提供する人。投資家あるいは証券会社は、その人に対して色々と無理難題を言う。サービスは無料、自分達が欲しいものは彼らが開発して当然というような、業者に対するかなり見下した考え方がある。無意識のうちに日本人というのは業者に対する社会的差別をしている。業者であろうとなかろうと、きちんとしたサービス、商品を提供している人にはそれなりの対価を払うのは当然だと思うが、意外とそうではない。日本人の中には「サービスはただ」「業者は無理を言っていい相手」というのがまだ色濃く残っているような気がする。
 次の規制。JBONDのビジネスに随分と壁になっていた。私共はシステムを設計し開発しそれを提供する商売なので、システム提供業者だと思っていた。ところがシステムが稼働し始めたところ大きな壁があった。私共のシステムを使うと画面に「A証券いくら、B証券いくら、C証券いくら」というふうに価格が並ぶ。これが価格の一覧性があるとして、PTS、私設取引所にあたるという。
 国債を扱える証券会社は数が限られていて、どんなに小さなところをいれても二十社くらい。その二十社の価格が全部並んでこそ取引所と思うけれども、その解釈が難しい。営業先の証券会社が「これはグレーだから、きちんとした認可を取ってない業者とはつきあいません」といってなかなか契約をとってくれない。
 それで財務省に「私共は取引所でしょうか」と弁護士を通じてお伺いを立てた。しかし、これまた店晒しで、半年間返事がなかった。その間にお金は出ていくばかり。進退窮まって「それだったら取引所になります」と啖呵を切った。
 そのためには、まず資本金を三億円以上にしなければならない。私共の会社の資本金は最初五千万円、そのあとシステム開発にお金がかかるので一億円ちょっとになっていた。それにさらに二億円積むとなると大変なお金。必死になってベンチャーキャピタルに営業し、その数は三十を越えた。
 その時、不運にもたまたま同じようなシステムを同じような時期に考えていた会社があった。それがエンサイドットコム。大手日系証券会社、野村、大和SMBC、日興シティ、それに当時は三菱証券UFJ証券、みずほ証券といった銀証、そして大手の外資系証券会社がコンソーシアムを組み、JBONDと同じような考えでシステムを作っていた。
 それがわかった時に、われわれJBONDはもう店をたたもうと思った。しかし、「大手の会社が手を結んで上手くいった試しはない。絶対大丈夫」と株主に言われ、そのまま戦い続けてきている。
 これだけの大手の証券会社が集まっていると、日本国債の売買のシェアは九割近い。それを自分達のシステムでしかやらない。これは独禁法に引っかかると思い、弁護士に相談してみた。弁護士は「戦えば絶対に勝てます。僕は自信があります」という。でも「戦っている間にあなたの会社はつぶれますよ」と言われた。会社が潰れては元も子もないということで訴えるのは諦めた。巧妙に独禁法の目をくぐり抜けるようなかたちで、大手が手を組んだという感はどうしても否めない。

◆守りではなく改革のマインドを持つ

 現在、大手日系証券会社のエンサイドットコムとわれわれJBONDと二つのシステムが動いている。
 システムというのは大体一つあればいい。「二つは面倒。お宅のシステムがいいのはわかっているけれども使えない」という投資家が多くいる。私共は日本の大手企業が入ってくれないので、外資系の証券会社に入ってもらっている。外資系は「システムの機能がいいから使う」と言っていただいている。システムの機能は大変立派で充実していると自負している。
 エンサイドットコムは大変に使いづらいとどなたも言う。何故そんなふうに不便にしているかと聞いたら、「このシステムを使って欲しくないからです」とのこと。何故かというと証券会社は優秀な営業マンを沢山抱えている。システムを使うと営業マンがいらなくなるのでシステムを使われると困るということで、使いづらいシステムを作っておくという。
 規制の話にもどる。ベンチャーキャピタルに行くと、「あなたの競合相手は誰ですか」と必ず聞かれる。それでエンサイドットコム、これは野村、大和、日興というと「あ、そうですか。どうも」といってそこで返される。だいたい大手のところが競合相手の場合は、ベンチャーに出資をすることはできないというのが九九・九%のベンチャーキャピタル。「私たちとしては応援したいのだけれども、ベンチャーキャピタルに出資をしているお客様達に説明がつきません」という言い方をされる。そういうわけで、ベンチャーキャピタルから出資をあおぐということは非常に難しかった。最後の最後にようやく二億一千万円出資をしてくれるベンチャーキャピタルがみつかり、株式会社JBONDがようやく私設取引所になることができた。
 次が横並び主義。「○○会社も契約してくださっています」というと、すぐに契約をして下さる方がいまだにいる。それを言いたいがために、私どももまず最初に一番大きい投資家を落とす。その名前を使えば、投資家に営業をするときはだいぶ楽にできる。そういう横並び主義、つまり自分で判断してということがまだ少ないというのが日本だと思う。自己責任で投資をする、行動するということが、それほど徹底されていないと日々感じている。
 そして既得権益を守ろうとする勢力。営業マンをたくさん抱えている証券会社は新しいものが出てきては困るということで、なかなかシステムを使わない。それに対してベンチャーは、新しいものを作る、新しいサービスを提供する。つまり、今までにないものをつくるわけだから、今までにあったものに関わっている人は必ずデメリットを受けることになる。だから、自分達の既得権益を守ろうとして、ベンチャーを阻害する力となる。
 イギリスの産業革命でラッダイト運動が起こったように、新しいことは何とか排斥しようとする。それでは進歩がない。その既得権益を守ろうとする人たちも、自分達の会社で新しいことをしようというマインドがあれば、もっと日本の活力も生まれると思う。

◆コンピューターの特徴は集計能力と検索能力

 私はベンチャーを始めてこれが五社目になる。一番初めは一九九五年、インターネットがようやく出てきたときにインターネット・プロバイダーの社長になった。商用のプロバイダーで、当時はまだ「FAXがあるからそんなものいらない」と言う方がほとんどだった。
 九七年の秋口には、また別の会社をつくった。その頃にはメールを使う人は出てきたが、パソコンを使う人は少なかった。大きな企業だとメール当番がいたくらいだった。そこで私共がやったのは、FAX機器にメールアドレスを持たせることだった。誰かがメールを送ってくるとその内容が全部FAXで流れてくる。「お宅はメールをよくチェックしていますね、すぐにお返事いただけますね」というようなことで随分好評をいただいた。
 その後、ヘッジファンドをやり、JBONDをやっている。どれをやっても新しいことをやるというのは、日本ではなかなか評価されない。最初に紹介した八%というのは二〇〇〇年以前の古いデータではあるが、その割合はそれほど変わっていないと思う。それはIMDというスイスの調査機関の国力調査を見てもわかる。起業家精神度の調査で、日本は毎年栄えある最下位(四十九カ国中四十九位)を続けているという。起業家の社会的評価は変わっていないと思う。
 インターネットの仕事をしてきたので、私にとってコンピューターは仲良しツールだが、コンピューターの特徴は一つがデータベースの集計能力。JBONDで取引をすると全てのデータがきちんと記録される。集計する能力は大変に優れている。もう一つ賢いのは検索能力。キーワードをいれるとパッとそれに関連したものが出てくる。この二つの能力が極めて高い。それ以外はあまり賢くない。これを考えずに、コンピューターをあまり上手に使ってない会社が多いように思う。この二つの能力を良く使い、更にインターネットを加えて大成功したベンチャーが沢山出てきた。例えばアマゾンドットコムがそうである。
 コンピューターあるいはインターネット関連のベンチャーで成功するというのはコンピューターの特徴、限界をよく理解している人だと思っている。その辺りのことを良く理解しているのはアメリカのエンジニア達、あるいはアメリカのマネジメントではないか。

◆経営効率化、革新に結びつけなければもったいない

 外国と比較して日本の企業はどうかというと、パソコンやインターネットの使い方がとても限られているように思う。インターネットを使っている、パソコンを利用していると言うけれども、これは単に読み書きそろばんをパソコンでやらせているだけ。それからお手紙の代わりにメールを使うというのも同じ。ホームページを作ったと言っても、これは単に出しているだけ。コミュニケーションのツールにはなっているかも知れないが、それによって企業の経営が効率化されたかとか、画期的な革新が起こったかというとあまりなされていないように思う。
 そういう意味で日本のIT技術に対する態度は、世界から取り残され、世界とは大きく違っているように思う。データベース集計能力、検索能力、それとインターネットという即時に情報を伝えられるツール、これを組み合わせてどうやって経営が効率化できるか、ということを頭で考えたら、もっといろんなことができるのにと思っている。
 その辺りの革新性、イノベーションというのを引き出すにはどうしたらいいのか。それは多分既存の企業ではなかなか難しくて、小さな会社や若者、要するに既にできあがった社会をあまり知らない人達の力が大きな力を持つのではないかと思っている。
 個人はインターネットを上手に使い、個人の生活行動も随分変わってきている。個人の力は日本でもバカにできないほど革新的になってきている。そういう意味では個人の行動は、世界共通になりつつある。そのように行動パターンがいろいろと変わりつつあるのに企業の方は変わらない。さらに企業の行動を阻害する規制がある。法律体系、あるいは規制は企業よりも更に遅れている。そういう意味で、色々と障害になるものが多いのではないかと思っている。ぜひ先生方に、さらなるご努力を頂きたい。

《質疑応答》

●質問 本当にやる気のある人がやれるように変な規制を全部撤廃する。これが我々政治家の一番やらなければいけないことなのではないか。

斉藤 ベンチャーの存在意義はやはりあると思う。大きな企業だと、やはり規範というものがあってなかなか革命的なことや新しいことはできない。リスクの高いものは当然ながら受け入れられない。ベンチャーが出てくる必要性はある。日本とアメリカで大きく違うのはベンチャーがある程度育ってきたときにIPOで上場するというのも勿論一つの方法としてあるが、もう一つエグジットとして大企業に買って貰うというのもある。大企業は自分達の中では新規の事業は育てられないということは知っているのでベンチャーを買収するということをすごくよくやる。だから、ベンチャーでリスクを抱えた人も大企業に入っていって、それなりのリターンがある。大企業の方でもベンチャーの力を利用できるといういい関係ができあがっている。日本の場合は、愚痴が半分以上だが、ベンチャーが成功しつつあるときに大企業は何をするかというと、まず叩いて潰そうとする。いいところを全部まねして、カネと人の力にまかせてもっといいものを安く作ってしまう。そういうことでベンチャーのリスクはさらに高くなっている。大企業もベンチャーの価値を認めてそれなりの正当な価格で買収するとか、そういうようなカルチャーが出てきたら随分変わって来ると思う。

●質問 最近その傾向は随分出てきたのではないか。

斉藤 昔ほどではない。ただ、潰されることでなくても、真似されることはすごく多い。インターネットプロバイダーをやっていた頃、色々と私も工夫をして新しいサービスをしていた。あるとき大きな企業から「契約を考えているので説明に来て欲しい」と言われて私どものエンジニアを連れて行ってきた。十人ほどのエンジニアがいて根ほり葉ほり聞かれた。私どものエンジニアは質問されると喜んで黒板に色々と書いて説明を丁寧にした。しかし、当然ながらその後契約はなく、すぐにそれは盗まれてしまった。そういう痛い思い出がいくつかあるので、大企業に対する不信感というのは根強くある。
 ただ、製薬会社は違うと思った。新薬はベンチャーが作ることが多いのでベンチャーに投資をするかとか、いつ買うかとかそこら辺のマインドはすごく進んでいると思う。

●質問 ベンチャーを育てるのが先なのに、儲けることが先になっている。

斉藤 中小企業やベンチャーは、大手ができないこと、手間がかかり儲けにならないことを小さな集団でやって生き延びてきている。地方の創業者あるいは二代目、三代目ともお話をするが、周辺で起業をやると悲惨な面を見られることが多い。企業というのは倒産してまたやり直すという方向もあると思うけれども、この国のシステムの中では「ここで見切りをつけてやめる」ということがうまく機能しないことがある。そういうものがあれば、やめることによってまた新たなスタートが切れる。

●質問 アメリカの場合は、投資する側も一度失敗した人の方に投資の目がいく。日本の場合一回失敗したらまず個人保証。身ぐるみ剥がされて再起不能。個人の無限保証は止めないとベンチャー、新規創業もなかなか定着しない。

斉藤 そこら辺の関係作業をしてあげることが私は必要かと思う。抵当に全部入れてその抵当を確保するために生命保険に入る。その範囲内において資金の貸し出しをする。運転資金がないからそうなる。最近は、保証協会が保険料率に差を付けて無担保でという方向が相当件数増えてきている。(文責・正しい日本を創る会事務局)