◆世界中の拉致問題解決の先頭に立つ安倍政権

 ルーマニアにも拉致被害者がいることが、ジェンキンスさんと同じ脱走兵の妻の家族と思われるの方が名乗り出たことで判明した。私は来週ルーマニアに行って、その家族と会おうと思っている。被害者のドイナという女性は、絵の勉強をしていた一九七八年十月、「日本で絵の勉強をさせてやる」とか「画廊も出してやるとか」誘われて、喜んで出国した後で消息が絶えた。
 このように拉致被害者の家族がアジアだけではなくてヨーロッパからも出てきた。北朝鮮は、拉致は日朝の問題であると言い、中国もそう言ってきたが、そうではない。つまり、世界中で北朝鮮が行ってきた拉致というテロに対して、安倍政権は先頭に立って解決に努めているということだ。


◆「六者協議」の枠組みの変化

 現在の六者協議の枠組みは以前とは変わってきた。二〇〇二年の時は、北朝鮮との距離はアメリカが一番遠く、韓国と中国が一番近く、日本はアメリカと中・韓の間にいた。当時は日本の中にも、外務省の田中均局長など宥和派と、安倍官房副長官に代表される「対話と圧力」派がいた。
 田中氏は秘密交渉で第一次小泉訪朝を実現させたが、その後、五人の被害者が帰って来た時、「一度北へ戻す。戻さなければ北とのパイプが切れてしまう」と言った。北朝鮮とパイプが繋がっていくと、このようにだんだんおかしなことになる。彼の頭の中では日本の外交のためになると本気で思っていたのだろうが、客観的には「パイプを切らさないように」が口実になり、日本政府に北朝鮮の要求を伝えさせる役割、代弁人役割をさせることになっていた。北朝鮮外交では金丸訪朝以降、朝鮮総連関係の利権問題があったが、田中氏は贖罪意識とスタンドプレーはあったと思うが、多分利権があったわけではないだろう。しかし、主権を守るという強い国家意識がないから、結局、北の工作に取り込まれる。
 当時の世論は安倍副長官をサポートするもので、五人を北に戻さないのは当たり前で、それで切れるパイプなら話し合いは別のラインですべきだということになった。それから五年が経ち、安倍さんが現在総理になり、日本は北朝鮮との距離を一番とり、一番強い姿勢を見せている。
 逆にアメリカは当時の日本の位置に降りてきた。当時の田中氏に当たるのがライス及びヒルの国務省ラインだ。そこが頭をもたげてきて、話し合いで北朝鮮の核をやめることができると主観的に信じている。
 今年一月、ベルリンでアメリカと北朝鮮が二国間協議をしたが、あの前に北朝鮮は国務省に色々な工作を行った。例えばある新聞の社長がヒルの所に来て、「中国は信じられない。アメリカが本当に守ってくれるなら核をやめてもいい」というような金正日の意向と称するものを伝えたと言われる。ともかく、北朝鮮の工作で、アメリカは北は変わろうとしていると思い始めたと言うことだ。
 ヒルはベルリンで、マカオの銀行に預けている不正資金でないものについては解除してもいいぐらいのことを言ったとも言われる。財務省は、「北朝鮮は犯罪行為をした。麻薬や偽札や大量破壊兵器の資金をマカオの銀行で資金洗浄した」と発表すると同時に、「マカオの預金はアメリカの主権の及ぶところではない。マカオ当局と中国政府が、我々の判断を元に考える問題だ」とも発表した。これは原則に基づくもので良かった。もし全額を下ろさせれば、中国政府は犯罪に荷担したということになる。一部だったら中朝関係がおかしくなる。
 ところがその後、六者協議の始まる前日、こうした法に基づいた発表をヒル・ライスのラインが覆し、ヒルが記者会見して、全額を北朝鮮に返すと言った。多分、金桂寛から「全額返ってこなければ六者協議に出ない」と言われたのだと思う。
 しかし、アメリカは自国の銀行に対しては法を適用できるが、マカオの銀行はアメリカの法律の適用外だ。アメリカが全額を北に返すと言ったのは無理な話で、やってはいけない線を越えている。そんな常識外れなことを今、ライスとヒルがやろうとして、ガタガタしている。余りにも拙速に北朝鮮に取り込まれていると言わざるを得ない。
 ただし、アメリカはこれで全て変わったわけではない。アメリカには国務省の見方に対する批判勢力がたくさんある。例えばチェイニー副大統領は、二月に訪日した時に横田さんに会った。拉致問題を国務省ラインが無視しようとしても、自分は反対だというのがチェイニーの意志だ。外に対しては反対とは言わないが、内部では激しいやりとりがある。


◆米国の金融制裁は効いている

 二〇〇二年と二〇〇七年の大きな違いは、現在は経済制裁が掛かっているということである。それによって、北朝鮮は大変苦しんでいる。
 二〇〇二年にも北朝鮮は大きく動き、拉致を認めたが、それは何故かというと、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」発言を行い、「テロとの戦争」のゴールの一つとして、北から大量破壊兵器を取り上げると演説したからだ。
 九四年のクリントン政権も第一次核危機に際して、国連安保理で経済制裁をかける準備をしたが、北朝鮮からすれば、ブッシュはクリントン以上のことをやる恐れがある。つまり、金正日がイラクのフセインのようになる可能性もある。それを防ぐには、アメリカの同盟国の日本と韓国を自分の方に引き寄せる必要があるということで、北朝鮮は日米離間のために、田中氏を使ったわけだ。
 一方、アメリカは小泉訪朝の時、大変危機感を持っており、小泉さんが平壌に行く前に濃縮ウラニウムの情報を出してきた。しかし小泉さんと田中氏は、「北は核問題について国際的取り決めを守ると言っている」として平壌宣言にサインした。アメリカにすれば、日本は拉致で北におびき寄せられ、核が棚上げされかかっているように思ったはずだ。ブッシュ政権が田中氏の行動を危惧していたことは間違いない。
 その後、二〇〇五年九月、アメリカは北朝鮮に金融制裁をかけた。その金融制裁は、マカオの二千四百万ドルをターゲットにしたものではなくて、北の全世界に分散されている秘密資金をターゲットにしたものだ。
 デビット・アッシャーという国務省の官僚がこう言っている。北は年間十億ドルほどの貿易赤字だが、困窮していない。核ミサイルの開発ができるし、金正日は贅沢品を輸入して食べている。これは、表の貿易収支とは別のお金があるからであり、それが犯罪資金である。犯罪資金は年間、約五〜七億ドルぐらいあり、海外に預金されていると。
 北朝鮮には、政府の計画経済とは別に労働党の三九号室という部署があり、そこが犯罪で得た資金を管理している。韓国の情報当局やアメリカのCIAの推計では、約四十三〜四十六億ドルぐらいある。覚醒剤の大量輸出やたばこや偽札は以前からやっていたが、二〇〇〇年代にその量が増加した。もう一つの北の主要な外貨稼ぎ源は武器輸出だが、アメリカはそうした違法行為にターゲットを絞った。
 この犯罪資金を止めると金正日政権は苦しくなる。マカオの銀行は見せしめに過ぎない。つまりアメリカは、北朝鮮の海外にあるお金は犯罪資金であり、犯罪資金を取り扱ったら、愛国者法を適用してその銀行とアメリカの銀行との取引をやめる、と言っている。
 去年の秋に韓国の情報関係者に聞いた話では、その時点で四十六億ドルの秘密資金の八割が動かせなくなっていたと言う。秘密資金は色々な名義の口座になっているが、それを動かせばアメリカにばれてしまうからだ。北朝鮮の口座であることを明らかにさせないためにも動かせないというのである。
 去年から三九号室の海外口座を担当した人々が一斉に帰国させられ、半分以上交代した。金正日からすると、なぜ秘密口座の存在がアメリカにばれたのか。誰か裏切った人間がいるのではないかということで、もう個人資金は親戚にしか動かさせないということだろう。マカオに金正男が出てきたりしているが、秘密資金を管理しているのは間違いない。儒教文化は一族以外信用しない。いつ誰が裏切るかわからないということで、金正日が相当追い込まれているのは間違いない。


◆日本の法執行制裁の効果

 もう一つは、安倍官房長官時代から日本も随分変わった。本気で北朝鮮を攻め始めた。おそらく小泉さんが対北強硬派の安倍さんを官房長官に使った背景には、アメリカとの足並みを揃えるという面もあったのではないかと思われる。
 警察は今、朝鮮総連に対して徹底的に法執行制裁をやっている。一時のオウム真理教と同様、今は朝鮮総連であれば立ち小便でも捕まえて、情報をとっている。特に北朝鮮にミサイルや核技術が出ていることについて、徹底的に締めている。だから朝鮮総連は今に潰されると思っている。先日、栄養剤を持ち込んだという理由で捕まった女性がいたが、彼女の夫が実はミサイル技術者である。その技術者は何度も北に行ってノドンやテポドンの指導をしていた。彼は科協(在日朝鮮科学技術協会)の幹部である。
 警察は科協に対しても徹底的に取り締まりをやっている。去年の五月、岡山の科協の事務所の手入れをした。その理由は、科協の幹部が他人の身体障害者手帳で新幹線の割引チケットを不正に買ったということだった。
 当時の安倍官房長官は、RCCという不良債権を取り立てる機構に、総連を相手に六百億円を返還させる訴訟を起こさせた。総連は任意団体で法人格はないから書類上は総連は金を借りていない。しかし、破綻した朝銀信用組合の不良債権のみで六百億円「総連と見なす」として裁判を起こした。それで去年、北朝鮮は慌てて中国に行ったり日本と交渉した。それがうまくいかないと、ミサイルを撃ったり核実験やったりした。
 しかし、ミサイル実験は失敗し、テポドンは空中で爆発した。これについてアメリカの軍事筋は日本の警察のおかげだと言っている。つまり、貧乏で科学技術水準が低い北が核を作れたのは日本の技術による。しかし総連を押さえられ、必要な技術や部品が北に行かなくなった。このような形で、アメリカの金融制裁と日本の法執行制裁が効いてきて、北朝鮮は下りてきているわけだ。
 今回の六者協議の合意では、六十日以内に核を凍結すると言っているが、その見返りはわずか五万トンの重油である。九四年のジュネーブ合意の時の見返りは、毎年五十万トンの重油と原子炉二つだった。八年経って北は既に四百万トンの重油をもらったことになるが、今回は五万トン――つまり八十分の一だ。北朝鮮はそれほど苦しいということだ。
 だから国務省は、北はこんなに下りてきた、彼らは本気で政策を変えようとしていると思うに至った。しかし、北朝鮮は下りてきた振りをしながら、騙そうとしていることは間違いない。苦しいから下りてくる振りをしているが、実は核を持ち続けながら、金融制裁と法執行制裁を緩める方法はないかと考えているはずだ。
 国務省は北朝鮮に騙され、こうした金融制裁と法執行制裁の成果を、核をやめさせることだけで使い果たしてしまおうとしているのではないかと思われる。


◆核も拉致も妥協できない日本 

 だから日本は、金融制裁と法執行制裁の成果を、国務省に使い果たさせないようにすることが必要である。つまり、核と拉致を完全に解決するまでは制裁が緩まないように、いかに外交努力を続けるか、ということが今の勝負所である。安倍政権にとっては、核と拉致の両方とも絶対に譲れない。妥協の余地はない。
 一方、自民党と民主党の一部には、「バスに乗り遅れるな」「孤立を避けるべきだ」「拉致ばかり言うんじゃない」という議論がある。北朝鮮はそうした日本の情勢を見ている。日本の世論が動くかどうか、安倍政権が揺らぐか否かを、北はずっと見ているはずである。
 とはいえ、北朝鮮も苦しくなっているのは事実であり、日本が拉致が進展しない限り全く動かなければ、日本はこのままでは動かないということを前提とした秘密交渉が始まるはずだ。例えばテレビコマーシャルで日本は被害者を救い出すと言っている。北から見れば、日本はテレビまで使って拉致問題をやり出しているので、妥協しないだろうということになる。本当の交渉がそこからスタートする。
 安倍政権は、拉致問題は絶対妥協できないということを、北に対しても、中国や韓国やアメリカに対しても示しているが、これは大変正しい姿勢だ。北がもし百パーセント核をやめても、日本は拉致問題が進展しなければ金を一銭も出さないということを、日本は韓国や中国にも認めさせ、「二・一三合意」にも書き込んだ。これは、かつての日本外交にはなかった自己主張である。安倍政権は日本外交史になかった大変なことをやっている。
 今回の動きをよく見てみると、外務省にさせていない。例えば六者協議の前に日本は「進展したら支援する。進展がなければ支援しない」という方針を決めていたが、何を「進展」とするかは総理が決めることになっていた。つまり、外務省には権限がないということだ。


◆注視すべきテロ支援国家指定解除をめぐる動き

 今後の正念場は、まず一つは日本の世論である。自民党内には山崎拓氏のような動きがあるし、また週刊誌が今しきりに安倍攻撃をし掛けている。
 もう一つはアメリカの動き。まず先ほど述べたチェイニー副大統領及び国防総省ライン対ライス・ヒルの激しい戦いの中で、どうなるのかという問題がある。
 そして、次の焦点はテロ支援国家指定解除の動きだ。北朝鮮は今後、「アメリカはテロ支援国家指定の解除を約束したのだから、解除しない限り原子炉を止めない」と多分言ってくるだろう。そうなると、ヒルは合意した以上の妥協をしようとするかも知れない。
 アメリカは過去一年のテロ活動を見て、毎年一回見直しをするが、その更新時期は四月の末だ。国務省は去年の年次報告書で北朝鮮について、「八〇年代の大韓機爆破事件以降、テロを行ったことは知られていない」と書いた。また、北朝鮮が返還してきた二人の被害者のニセ遺骨について、報告書は「ニセ物」と書いていない。それ以外の被害者の安否の問題についても「争点として残っていると」述べている。つまり国務省は、拉致問題について解決済みかどうかの論争が日朝で続いていると言っているのだ。
 ここには国務省の本音が出ていると思われる。つまり本当は拉致問題に関わりたくないわけだ。しかし我々が運動して、アーミテージ国務副長官(当時)に何回か直接訴えて、二〇〇三年版の報告書から日本人拉致が書き込まれることになったという経緯がある。
 我々はなぜそれをやったか。あるいは「拉致はテロだ」というスローガンを出したのかというと、このテロ指定の問題をいずれ北朝鮮が攻撃してくると考えたからだ。つまり、アメリカに解除させないために、「拉致はテロだ」とアメリカに言わせたわけである。いよいよ北がこの点を狙ってきたということである。
 問題は、今年の年次報告書の拉致の記述がどうなるかだ。中立的な記述になるのか、ニセの遺骨が出てきたのはけしからんと書くか。それによってアメリカがどこまで本気なのかということがわかる。国務省は北朝鮮にテロ指定の解除作業を開始すると言った手前、去年よりは緩い記述にしたいと思っているはずだ。もちろん、我々は去年よりきつくさせたいと思っている。


◆今こそ勝負の時を迎えている

 当面、北朝鮮が狙ってくるのはテロ支援国家指定解除である。指定が続いている間は、アメリカ政府は人道支援以外の経済協力は出来ないし、また世界銀行、アジア開銀、IMFなどの国際金融機関がテロ国家に融資しようとしたら、アメリカは反対しなければいけない。アメリカはそれらの機関の多額の出資国だから、アメリカが反対すると融資が出ない。
 実はアジア開発銀行は北朝鮮と韓国、またアメリカの国務省も今狙っている。多額の融資をして北を黙らせようとしているわけだ。もしアジア開発銀行の融資が北に入れば、お金を出さないで頑張っている日本の努力が弱まってしまう。北はそこを突いてきている。それを止められるかどうかが今後の重要な課題である。
 このように、今まさに勝負の時期を迎えている。北は苦しいから何とか制裁を解いてもらおうと試み、国務省は解こうとしている。それを日本がどう止めるかだ。
 もし先生方の中でアメリカとパイプがある方は、是非議員外交をしていただいて、日本はテロ支援国家指定解除の動きを注視していることを訴えて欲しい。日米同盟で日本もテロと戦っている。イラクに兵隊を出し、インド洋にも艦艇を出している。それと同じくらい我々は北の拉致に注目しているというメッセージを出していただくことが大切ではないか。
 実はそれに対して、相手が仕掛けてきたのが慰安婦問題である。日米同盟が強められると困るから、過去の慰安婦問題を彼らは出してきたのである。慰安婦問題の後ろには、実は北朝鮮、韓国の左派、そして中国共産党がいる。
 だから今度の安倍総理の訪米は、過去の問題をメインにされてしまうのか、それとも北朝鮮をどう処分するのかという問題において、日米の国益のすりあわせができるのか。日本の外交の将来を決定するような重大な局面になっているのではないかと私は見ている。

《質疑応答》
●質問 テロ支援国家指定解除の阻止は、安倍総理訪米の重要な要求の柱になってくると思うが、日本はどういう戦略、あるいはカウンターオファーを考えているのか。
○西岡 王道を行くなら集団的自衛権だろう。特に重要なのはMDについてである。
 つまり、北のミサイルがハワイに向けて撃たれる場合、日本が撃ち落とすことができるところを通るが、それをどうするのか。安倍総理に私たちは以前から、「日本の上空を飛んでいく北のミサイルがアメリカに向かったら、私が飛びついても止める」と言ってもらえれば、アメリカも嬉しく思うだろうと言っている。同盟とはそういうものなんだと。
 もう一つ本当にやって欲しいのは、周辺事態法に基づき周辺事態が適用された場合、アメリカが攻撃されたら日本が攻撃されたとみなして一緒に戦うことだ。安倍総理は検討すると言っていたが、そこまで踏み込むことをこの四月にできるのかどうか。
 ともかく、アメリカから見て日本が本当に同盟国なんだと思えるようなことをすることが必要だ。やはりアメリカの一般大衆も含めて、日本は同盟国なんだ、頼れるのは中国ではなくて日本だ、と思わせるようなことができるかどうかではないか。その意味で、集団的自衛権は大きい。

●質問 北朝鮮の核実験は成功しなかったのだから、核問題でアメリカは北に譲歩する必要はないのではないか。にもかかわらず、アメリカが譲歩し始めた理由は何なのか。
○西岡 一つは、先にも述べたが、北が降りてきたということである。北が苦しくなって、六者協議に復帰してきて、「二・一三合意」までまとめた。
 もう一つは、そうした北の動きに国務省がだまされたということである。そこには、やはり中間選挙で共和党が負けたことが影響していると思われる。例えば民主党が議会の中でブッシュの北朝鮮政策を色々と批判している。クリントンの時代には少なくとも原子炉は止まってたが、ブッシュが悪魔だとか言ったおかげで、原子炉が動き始めて、プルトニウムが増えたではないかと。そうした中で、「プルトニウムの増産も止められる」と北が言っていると聞いて、国務省が飛びついてしまったということだ。

●質問 現実にアメリカがテロ支援国家の指定解除をする可能性は高いのか。
○西岡 私はそう簡単ではないと思っている。一度クリントン政権が北のテロ支援国家指定解除をやろうとして、二〇〇〇年に解除ギリギリまでいった。そのときネックになったのが日本人拉致だった。当時、アメリカの議会調査局が、テロ指定を解除すべきかどうかを検討した報告書を出したが、そこでは拉致を現在進行形と見るか、過去のものと見るかが検討されていた。
 そこで我々は、拉致は「現在進行形のテロ」だとアメリカに訴えることを決めた。そうした経緯があるから、ブッシュ政権の間はなかなか解除できないのではないか。特に四月の首脳会談で安倍総理からきちんとメッセージが発せられれば、ブッシュ政権の間は大丈夫ではないか。しかしそれも残り二年しかない。もし民主党の政権になると、どうなるかわからない。

●質問 慰安婦問題と拉致問題が一緒にされて、拉致被害者の人権を言うのなら、慰安婦の人権はどうなんだという非難が、アメリカなどからも聞こえてくるが、これについてはどう考えているか。
○西岡 それは北朝鮮が以前から言っていることだが、そうした非難を韓国とアメリカの一部も言い出している。ヨーロッパはまだそんなふうにはなっていない。
 結局、アメリカをターゲットにして、十五年位前に中国共産党がネットワークを作った。その結果、アメリカの保守派の人たちも含め、権力による強制連行や集団レイプがあったと信じてしまった。これは日本外交の大失政である。
 なぜなら、向こうは目的を持って、着々と日本の同盟国の保守派までをも含めてオルグしているのに、日本政府は反論もしなければ、逆キャンペーンもやらなかったからだ。アメリカは自由な言論の社会であり、反論しなければそれを認めたことになる。
 日本政府が慰安婦について言ってきたのは、「二十万人の慰安婦を強制連行したと北朝鮮は言ってるが、二十万は多過ぎる」ということ。それから、「慰安婦問題で日本は既に謝っている」ということの二つだ。その結果、二十万でなくても、セックススレイブは実在し、それについて日本は謝ったと受けとめられることになったのは当然だろう。今回のアメリカの慰安婦決議は、そうした対応を十七年間続けてきた帰結でもある。
 それ故、当面は苦しい戦いとなるが、ここで負けるわけにはいかない。我々は十年前から運動を始めて、日本人拉致を理解できるアメリカの議員を増やし、学者を増やし、ジャーナリストを増やしてきた。そのように、日本はセックススレイブを持ったことはないという事実をアメリカ社会に広めるという明確な目標を立てて、運動に取り組むべきだ。官民一体で中国のキャンペーンに倍するような運動をやる必要がある。
 例えばアメリカには保守的な学者がいる。具体的にはヘリテージやAEIなどの保守派のシンクタンクの人間と、腹を割って話せるような人間関係を作る必要がある。そして、実は慰安婦問題は日米同盟を弱体化させるための金正日や中国の陰謀で、彼らが有利になるための工作だということまで説明できるような関係を作らなければいけない。
 そうした各個撃破によって、日本側の主張の核となる人間を作り、アメリカ人がアメリカの中で論争できるような状況を作ることが必要だ。
 そのためには、民間のネットワークとともに、議員のネットワークを作るべきである。できれば超党派で、拉致議連と同じくらいな規模で作るべきだろう。同時に民間でも「救う会」とは別に「日本の名誉を守る会」とでも言うべき組織を作り、学者を組織して、全国で講演会などをやり、アメリカとも交流したい。そういう運動を展開しなければ、中国共産党にやられてしまうだろう。
 それと同時に、日本にもヘリテージのような民間のシンクタンクを是非とも作るべきだ。そうした民間の保守シンクタンクを財政的に強力に支援する体制をつくり、人材の面でも大幅に拡充して民間保守シンクタンクのレベルでヘリテージなどと行き来することが出来れば、慰安婦について英文で資料を渡すことも出来る。
 政府のシンクタンクや、学者の研究所がいくらあっても、きちんと反論しないからダメだ。そんなに大きくなくていいから、きちんとモノが言える、絶対にぶれない民間保守シンクタンクが必要だ。多くの情報を有する官僚に負けないだけの、彼らに反論できるだけの情報の蓄積ができる民間のシンクタンクがあれば、我々はもっと戦えるようになるだろう。(文責・正しい日本を創る会事務局)